のりこと時空の部屋2
ユコバックのことばにメッヒは顔をしかめたが、それは一瞬で、すぐ後には
「――そうですか。それは私のほうでなんとかしましょう」
冷静に言った。
「たのむぜ!オレの手にゃおえねえ!」
「どういうこと?いま底が破れたって……」
受話器を置いた番頭にのりこがたずねると
「はい。どうもこの旅館の底にある境界線がやぶれて、下の世界とつながってしまったようです。
その結果として瘴気がわき出ているようです」
「下の世界?なにそれ?」
旅館の下になにかあるなんて聞いてない。
のりこが
「そんな大事なこと知らせといてよ」
と不満げに言うと、
番頭は少し首をかしげて
「わざわざ言うこともないと思っていました。人間界の下にある世界といえば決まっているでしょう」
「なに?」
「地獄ですよ」
地獄!そんなのほんとにあるの?しかもこの旅館の下に?
「うちの旅館の風呂の釜は地獄の余熱をつかって焚いているんです。
ふだんはちゃんと固い底をはってなにもこちらに悪い影響が出ないようにしているんですが、その底が破れたとなると……ちょっとつごうが悪いですね。ユコバックの手にはおえない。
今は瘴気がわきだすぐらいですが、そのうち余計なやつらまでわきだしかねません」
「よけいなやつらって?」
「地獄にすくう亡者や魔物、それに悪魔などです。彼らにここに上がってこられたら面倒です。
なにせ彼らには『たしなみ』というものがありませんから……それこそ地獄絵図になってしまいます」
(――なにそれ?たいへんじゃん)
こわいことを平然と言う番頭は、つづけて
「しかたありません。ユコバックが底の破れをなおすあいだ、私が地獄に入って上に来ようとする連中をおさえましょう」
さらっと言った。




