のりこと魔女の店21
なんてやつだ。
よく考えたらあの魔女に旅館をのっとられてその下ではたらくのも、今こうして番頭にせっつかれてはたらくのも大して変わらないんじゃないかしら。
どっちみち、旅館のあるじと言ってもなにひとつ自分の思いどおりになどならないのだから。
(件の言うとおり、こいつには気をつけないといけない)
のりこがジトリまなこで番頭を見つめていると
「――おいっ!それよりいいかげん、おれのすがたを元にもどしてくれ!」
がなり立てるのは、テーブルに置かれた卓上ライターだ。
釜たきのユコバックはもとのすがたにもどしてもらっていないのだ。
番頭はつめたく
「それはどうですかね?あるじ。アンジェリカという新たなスタッフが入ったわけですから、彼はもう『いらない』のでは。――アンジェリカ、あなたに風呂番をまかせてもいいですか?」
「あたくし、火はあまり好きではないですけど、力は並の人間よりよっぽどありますわ」
ホホとわらう人形がおそるべき怪力であることはもう知っている。
「じゃあ、やっぱりユコバックはいらないですね。処分しましょう」
あっさりと冷酷な判断をする番頭に、
ライターすがたの釜たきはあわてて
「お、おい。ひでえよメッヒ。そりゃあんまりだ」
「どうします?あるじ」
問われたのりこは
「……そりゃ、いてもらったほうがいいんじゃない?アンジーにはほかの仕事をしてもらわなきゃ」
そのことばに、
番頭はちょっと残念そうに
「では処分はやめましょう。しかし、あなたには少しそのままのすがたで反省してもらいますよ、ユコバック。この旅館は禁煙ですから外の喫煙場に置いときます」
「番頭はん。あそこは雨がかかる野ざらしでっせ」
お美和の声かけにも
「それでいいでしょう。頭を冷やす意味でも」
「な、なんだよ番頭さま。ゆ、ゆるしてくれ。あんたの言うことはなんでもきくからよ!」
「……だから、外にいなさい。クワク、もって行きなさい」
「かしこまった」
「おい、メッヒ!ゆるしてくれよ!もうバクチはしないから!」
「あたくし、あの魔女のもとをはなれられてうれしいですわ」
最初はさびしく思っていた旅館がずいぶんにぎやかになってきたことが、のりこにはなんだかうれしかった。




