のりこと魔女の店18
そのようすに
「ククククク……」
メッヒはぶきみな笑い声をひびかせると
「いや、失礼。しかし、さすがにこうも思うがままに『こと』がはこぶと、わらってしまいます。
そもそも、あなたはおかしいと思いませんでしたか?
この私が、負けるおそれのある勝負などするわけがないでしょう?あるじやクワクはともかく、旅館を危険にさらすマネをするはずがない。
あなたが人間の心を読むことができるなど、とうのむかしに私は知っていました。そして、心の読めない私とは直接勝負はしないことも予想がついた。ですから、あるじに勝負をしていただいたのです。
しかし、たしかにどんなに私が策略をめぐらせても、あるじに伝えるとそれは魔女に知られてしまいます。そこで私は一回目『あえて』あるじに負けていただいたのです」
「あえて?なんで、そんなことをわざわざしたの?」
のりこの問いに
番頭は
「そうすれば、魔女が油断するからです。もっとも警戒すべき私を手に入れたヘクセは有頂天になって、必ずもう一勝負いどむとふんでいました。
実は私は前もって、あなたが大きな勝負をする時はいつも二番勝負……最初はサイコロ、そして二番目は宝探しを持ちかけるという情報を得ていたのですよ」
魔女は顔を引きつらせて
「なんだって?……さてはアンジェリカ。おまえ、情報をもらしていたのか!?」
人形はかわいらしく首をかしげると
「……あたくし、正直いやけがさしていたのです。あなたのようにインチキをはたらいて、人々からものをうばう下品な主人につかえることに。ですから、こちらの番頭さんにユコバックさんのことをお知らせしたのです。その上で、あたくしがこのお店から出られる方法はないか相談にのっていただきました。
――さすが、高級旅館の番頭さまはちがいますわ。こんなにみごとな策略をたてて、あたくしを救ってくださるだなんて!」
(高級旅館?どこが?)
のりこの疑問をよそにメッヒはまんぞくそうに
「フフフ、当然です。まちがいなく勝てると油断しているヘクセなら、ちょっとしたかけ代の上乗せをゆるすと予想したのです」
どうやら、すべてがメッヒの手のひらの上のことだったらしい。
「おじょうさま。あたくし、あなたに末永くお仕えいたしますわ」
アンジェリカはかわいらしくドレスのすそをつかむと優美にお辞儀した。そのようすに
「おのれ!よくも小娘、あたしの人形を!」
魔女が怒りのあまり、のりこに飛びかからんとするのを
ピシッ!
はげしい平手で壁まで吹き飛ばしたのは、かれんな人形だった。
「あたくしのご主人さまに、きたない手でふれないでくださいまし」
魔女はつぶれたガマガエルのようにひっくりかえっていた。




