のりこと魔女の店13
ヘッセはふきげんに
「なんだい、いいように進んでたんだ。あんた、あたしのしもべになったくせにじゃまする気かい?」
「いえ。そんな気は少しもありません。ただ……そのかけではあまりに公平性に欠ける気がします。
あの旅館の所有権とくらべると、いかに有能な私がいるからとはいえ、ただ従業員三人をとりもどすというのは、ちょっとかけとして不均等に思えます。
なにか、もう少し『かけ代』をくわえてやったほうがよろしいのでは?」
「なんだって!?いやだね。せっかく前もっての勝負に勝ったんだ。これ以上つけくわえてやる義理なんてないよ!」
つっぱねる魔女に、
新しいしもべは
「そうですか?しかし度量の大きいところを見せておいたほうが後聞がよいと思いますがねぇ。
なんといって、あなたはあの旅館のあるじ……いわば女王になろうというのですから」
「女王!」
魔女はそのことばに敏感に反応した。
「……そうだねえ、あとでみみっちい女王と言われるのはたしかにしゃくだ。わかったよ。
しかし、いったいなにをつけてやったらいい?この店とかはいやだよ。それまでかけては、せっかくその前に勝負して勝った意味がない」
「もちろんです。ちょっとしたものでいいのです。……そうですね。たとえばこの店に置いてある商品で好きなものをひとつつける、というのはいかがでしょう?」
「品をひとつ?」
魔女は店内を見わたすと
「……まあいいだろう。それぐらいなら」
と提案にのった。
のりこには、そんなふたりのやりとりは正直どうでもよいことだった。
(こんな店の雑貨がひとつだなんて。こっちはそれより家をとられてしまうのかもしれないんだから!)
「じゃあ、かけ代はそれでよいとして、勝負の種類はどうするかねえ。なにせ、あんたはこどもだから複雑なゲームはできないだろうし……どうだい?こんどは宝探しということで」
「たからさがし?」
「そう。なに、かんたんなことさ。あんたはその鍵をこの部屋のどこかにかくせばいい。そのかくした場所をあたしが探し出すゲームだ。
五分以内に見つけ出すことができたらあたしの勝ち。できなければあんたの勝ちだ」
急に、こどものあそびの感じが強くなった。




