のりこと魔女の店12
「鍵?なんで?」
のりこは首にかけている鍵をぎゅっとつかんだ。
「そりゃわかるだろう?あたしが欲しいのは綾石旅館そのものだ」
「旅館……」
「そうさ。まだこどものあんたにはわかっていないだろうが、あの旅館を手にすることができたら、あたしはこの業界で大きな顔になれる。それこそ龍王や魔神にならぶようなね。あたしはビッグになってみたいんだ……」
うっとりとした顔で自分の野望を語るヘクセのとなりで、メッヒが
「くだらん」
小声で切りすてた。
のりこは『この旅館はねらわれがち』という件のことばを思い出した。
自分にはただめんどくさいだけの旅館に、そんな価値があるだなんて思いもしなかった。
「どうする?かけを受けるかい?それとも、ここでひとりすごすご帰るかい?」
魔女の申し出に少女はまよった。
正直、ここで勝負にのるのはあぶなすぎる。なにせ負けたら自分の家を取られてしまうことだからだ。
しかし、かといってメッヒもクワクもいない状態で、お美和とふたりだけで旅館をやっていけるかといえば、それはもちろんむずかしい。
「……どうしたらいいと思う?メッヒ」
思わず、いつものようにたよったのりこだったが、
もはや元番頭でしかない男は冷ややかに
「――どうなさるかは、あなたがひとりで決断なさるほかないでしょう」
と、言いすてた。
(あんたの失敗のせいでこんな目に会ってるのに!)
のりこが頭をかかえると、虫かごに入ったクワクが
「あるじ。それがし、このようなむさとした魔女につかえるのはいやでござるよ」
しょげた態でうめく。
魔女は、鼻を鳴らして
「うるさいこぞうだね!あんたの主人はもうあたしだ。ぐちゃぐちゃ言うと、もう一度、殺虫剤をふりかけるよ」
「ひょぇぇぇぇ」
そのあわれなようすに
「やめて!わかった!勝負するから。クワクをいじめないで!」
のりこはさけんだ。
(しかたない、女は度胸だ!)
勝ち目がうすくても、しなきゃいけない勝負が女子小学生にはあるのだ。
「ほほほ。そうかい。じゃあ、さっそく勝負といこ……」
よろこぶ魔女に
「――おまちください。その条件ではいささかつごうが悪いでしょう」
口をはさんだのはメッヒだ。




