のりこと魔女の店6
「カネならまだいいですが、そんなものではこいつのバクチ欲はおさまらなかったのでしょう。――ユコバック。おまえ、自分の身をかけたな?」
ユコバックはヘヘッ、とわらうと
「ちょっと、もうかけるものがなくなっちゃってねぇ」
そのちっともわるびれないようすに、番頭はため息をついた。
一連のやりとりをだまって見ていたヘクセは
「ほっほ、番頭さん。あたしのものになった、いわば店の商品をかってにいじらないでいただけるかしら。そいつとあたしは正式な勝負をして勝った。なんの文句もないはずだろう?」
そんな!自分の身をかけるだなんて!
そんなこと、ゆるされないんじゃないの?
「人間の世界ではもちろんだめですよ。しかし、われわ……このものたちの世界ではふつうにおこなわれていることです。たしかにヘクセの言うとおり、ユコバックが自らの身をかけ負けたことについて、私たちはなにも口をはさむ権利はありません」
(めちゃくちゃだよ、そんなの)
あきれるのりこのわきで番頭は
「――しかし、いかがでしょう?ヘクセ。こんなのらくらとはいえ、ユコバックがうちの従業員であることは変わりません。なんとか返していただくわけにはいかないでしょうか?カネですむことなら、なんとでも都合をつけますが」
女店主はメッヒの申し出に、にっかと黄色い乱杭歯を見せてわらうと
「あたしがそんなものを欲しがるとお思いかい?番頭どの。あたしがなにをのぞんでいるかは、あんたがいちばんよくわかっているだろう?
あたしがしたいのは、こいつと同じ……バクチさ。
それも自分の全存在をかけた、たましいがひりひりするようなやつをね。ユコバックを取りもどしたいのなら、あたしと勝負をして勝つことだね」
目がこわい。
このおばさんも、どうやらひどいギャンブル狂らしい。




