のりこと叔母(続)3の17
のりこが不審に思う間に、天から一筋の妖光が環状列石に落ちて、目に見えない力と耐え難い悪臭が広がる。
「これでおしまいだ」
と喜ぶアーミテッジ博士だったが、天からの禍々しい光の柱が消えずに環石柱につながるのをみとめて、いぶかしく
「――なぜだ?光が消えない?ダンウイッチでは、呪文によって怪物は退治され、おしまいだったはずだ」
専門家にわからないことを素人がわかるはずもない。
思わぬ事態にとまどう一同に向かって、狂喜の高笑いを上げるのは、その怪物の生みの親だった。
ラヴィニア・ウェイトリーは
「デヘヘヘヘヘッ!あのときとは条件が違うのです、間のぬけたみなさまがた。今回は、このプロスペロの本が存在します。これは、あなたがたが持つ不完全な写本とは異なります!ギリシア語版の正統的な『ネクロノミコン』です!」
あざけると、瀕死の息子に向かって
「よく達成しました、四番目。これ以上の犠牲は不必要です。あなたの血と求めによって、ついにその門は開かれました。わが夫にして偉大な存在が、その高貴な姿を見せるのです!」
気味わるい光の柱を通って、なにかがフォースの身体のなかに入りこんだ。
番頭はその様子を見ると、得心顔で
「なるほど。コチラ……現界に直接顕現するのはむずかしいので、子の肉体に宿るというわけですか。受肉の方法としては一番自然ですね」
感心すんなよ。
それは、なんと形容すべきものであろう!
落し子……フォースに似ているといえばそうだが、すべてにおいて超越している。
まず、なんといってもその身体の大きさ、禍々しさよ!
ひとつひとつが刻一刻と色と大きさを変え虹のような光沢を放つ(といっても決して美しくはない)球のあつまり……その巨大な両生類の卵のつらなりを思わせるものの奥に、のりこが見たものは無数の触手、そしてさらに深い奥へとつながる大きな口、というか穴……そこにあるのは、徹底的な虚無であった。
「――ああ、わたしのご主人さま。わたしは長らくあなたを待ち望んでいました!」
恍惚の表情を浮かべて近づくラヴィニアに対して、イソギンチャクの先みたいなものが、ちょっと反応を見せたと思ったら……
パクリッ!!
あっ!……魔女が(ひとくちで)食べられちゃった!




