のりこと叔母(続)3の15
見ると叔母が横たわっていた地面がえぐれている。
なにか急激な衝撃が加わったのだ。
しかし、蘭子に怪我はない。
衝撃が来る直前に、精霊……エアリアルがすばやくランコを抱き避けていたからだ。
「あぶない!」
いったいなに?
今なにか目に見えないものが、ランコおねえちゃんを襲った。
エアリアルがいなかったら、大けがをしているところだ。
精霊は慎重にあたりを警戒しながら、蘭子を抱え浮くと
「……すがたの見えぬ化け物だ。旅館で悪さをしているのはわかったが、ぼくもはっきりと捕捉することができなかった」
すがたが見えない?じゃあ、食材を食べたり件を襲ったりしたのは……
「こいつだ。完全に透明になる」
透明って、それじゃどこから襲われるのかわからないじゃない。
プレデター?とまどうのりこに、
老女は
「その子は四番目。サードとは双子のきょうだいにあたるものです。奇遇にも、わたしが最初に産んだのも双子でしたが、それら……一番目と二番目は、母親であるわたしの言うことを聞かない野放図なものたちでした。わたしはその子らを見限り、ひとり家を出たのです。
そのあと産んだのが、サードとフォースです。我の強いファーストやセカンド、サードと違って、そのフォースはわたしの言うことをよく聞きます……オー、イエス。グッド・ボーイ」
杖をかざしてほめると、エアリアルに向かって
「いかに古来の精霊といっても、結局あなたはわたしの祖先に封じられた弱者です」
「なんだと……グハッ!」
言い返そうとした空気の精だったが、そのとちゅうに弾かれた。
わからないが目に見えないフォースの攻撃を食らったのだろう。
「やめて!」
のりこはさけぶが、すがたの見えない相手にいかんともしがたい。
「――もろとも偉大な方の贄となることを、わたしは求めます」
シコラクスの冷酷な宣言に、少女たちが身をすくませると……
どこからか
「――恐縮ですが、当旅館では従業員を食事として提供しておりません」
聞こえたのは、おなじみの皮肉めいた物言いだった。




