のりこと叔母(続)3の13
次の瞬間、妖精は怒りに顔をゆがませ吠えた。
「しかし!またもや、ぼくは魔女にしてやられたのだ!蘭子に近づくバビロン女の本性に気づくことができなかった!イニーナに邪魔とみなされたぼくは、不意を打たれて小瓶に封じられてしまった!」
精霊って、簡単に封じこめられるんだね。
「きみたちがあの女を倒してくれたおかげで、ぼくの封印は解けた。しかし、なんということか!あわてて蘭子のもとに駆けつけたら、そばにいるのはあのにくいシコラクスの子孫……ラヴィニア・ウェイトリーとその息子ではないか!しかも、蘭子は記憶を失っている。ぼくの気配を感じることもできないでいた。
なんてことだ!育ての親と言っても良いぼくに気づかず、ラヴィニア親子を世話役と思うだなんて!悲劇!なんたる悲劇だ!」
妖精は芝居がかって大げさに嘆くと
「蘭子の安全を考えると、安易にぼくの姿を明かすわけにもいかない。ぼくはただの一宿泊客として彼女を遠巻きに見守ることしかできなかった……まあ、時にはハーピーのすがたになったりして守ったがね」
「えっ!?あれは、ハーピーが蘭子おねえちゃんをおそったんじゃなかったの?」
のりこのおどろきに
「そんなのは、あの魔女の嘘っぱちだ!あれはシコラクスが無理やり蘭子の記憶に立ち入り、幹久が隠したこの島の場所を探ろうとしたから、それを阻止したのだ。あの子を傷つけるようなまねは、ぼくが許さない!」
ほんものの世話役としてプライドを見せた。
「なんで、ラヴィニアさんはこの島のありかが知りたいの?」
「それは……」
少女の問いに、妖精がこたえようとしたとき
「――もちろん、かつて入手しそこねた『この本』を見つけるためです」
横入りしてきたのは、その話題の魔女……現在の年老いたラヴィニア・ウェイトリーだった。その手には、エアリアルの幻影内で鬼三郎が持っていた古めかしい書物がある。
万事おおぎょうな空気の精は
「――しまった!ぼくよりも先に見つけられた!」
その場でトンボを切って驚きとくやしさを表現する。
とった動きはふざけているが、表情は青く変じている。
アルビノの老女は
「……やっと手に入れました。かつて、わたしはもう少しの差でこの書を手におさめるところでした。それを、あなたの母親によって遮られました。百合子の放った術の後遺的障害により、わたしのことばは不自然に変化し、その結果としてまともな魔術詠唱が困難となりました」
ぎこちない翻訳調だったのは、おかあさんにやられたからなのか!




