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あやしの旅館へようこそ!  作者: みどりりゅう


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327/350

のりこと叔母(続)3の1

 かみなりと、いなびかり。大嵐。


 のりことクワクは大波の上、板につかまっている。


「――クワク!」


「ここですぞ、あるじ!ご無事か!?」


「無事じゃないよ!なんで、旅館の中であらしにあわなきゃいけないの?ずぶぬれだよ!」


 消えたランコを追って置き時計のなかにはいった主従は、そこが波荒れすさぶ大海原(水が塩っ辛い)であることに心底おどろいた。

 クワクが必死にあるじをつかんで泳いでくれたのと、波に浮かぶ木板を見つけつかまることができなければ、ふたりとも溺れ死んでいるところだ。


 前回この時計の中に入ったときには、もちろんこんなことはなかった。

 ぜんまいじかけのメカニカルな部屋だったはずだ。

 思いもしなかった理不尽な環境に不満が爆発するあるじに、


 男衆は

「さて、こればかりは知れませぬ!この旅館はまったくもう!前から方度ほうどないものですのでな!……ややっ!これはいかぬ!板が!」


 ふたりのつかまる木板が、波の勢いにあいだでひび割れる。

挿絵(By みてみん)


「やだっ!クワク、はなれちゃうよ!」

 のりこは手をのばすが、もう届かない。


「あいや、あるじ!こうなってはもうお別れでござる!息災そくさいを祈りまする!なんとしても生きて、またくがでお会いいたしましょう!」


「ああっ、クワク!クワク!死んじゃだめだよ!」


「それがしも、こんな海でぷくぷく死ぬのは御免でござる。蜘蛛らしく、土の上でぴきぴき乾いて死にとうござる!」


 別れた少女と蜘蛛男衆は、それぞれ波に呑まれる。



Come unto these yellow sands,     

And then take hands;         

Curtisied when you have,and kissed,   

The wild wave whist,         

Foot it featly here and there,       

And sweet sprites bear         

The burden. Hark,hark…        


Bow-wow,bow-wow,bow-wow…      


(いでませ。黄色い砂浜に

  互いに手を取り

 見合わして口づけすれば

  荒波もだまりこくる

 優美に踊れば

  妖精たちも囃しだす

 お聞きよ、お聞き……


 バゥワゥ、バゥワウ、バゥワウ……)


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