のりこと叔母(続)2の11
シコラクスは
「……身体の状態は健全です。ハーピーに襲われたショックで意識は喪失しています」
「はーぴー?なにそれ?」
「ハーピー……ハルピュイアなどと名付けられます。女の顔に鳥の体を持った化け物です。おじょうさんに飛びついてきました」
「ランコさまを抱きかかえるシコラクスさまに襲いかかろうとするので、あた
くしが箒で追っ払ってやりましたわ」
「ありがとう、アンジー。それにシコラクスさんも……なんであんなものが旅館に?それもランコおねえちゃんを!」
言いながら、のりこは
(件が言っていたよくないものが、いまのハーピー!?一体、どこにひそんでいたのかしら?)
少女の疑問に答えたのは、世話役だった。
「なぜ旅館にいたのかはわかりませんが、彼女を襲った理由はある程度以上に推測がつきます。彼女はプロスペロの血の筋を引く魔術師の家の生存者です。プロスペロの残した魔術的な資産を欲するものは、魔術師のなすコミュニテイにたくさんいます」
メッヒの言っていたことか!?でも、まさかうちの旅館の中でそんなこと!
ゆるせない!
「用心することを、我々は訴えます。以後お嬢さんの警護は、わたしとその息子が中心になって行います。このように警護に不備がある旅館は信用できません」
うっ。失礼な言い方されちゃった。
でも、実際に旅館内部で襲われるなんて不名誉な事件が起きてしまったのは本当だから、言い返すこともできない。
メッヒがこのことを知ったら、なんて小言を言われるか……気が重い。
蘭子はそのまま、シコラクスが部屋に連れ帰った。
少女がちょっと気落ちしていると、クワクが廊下を走ってきた。
「あるじ、お美和どのがお呼びでございまする。至急『たそがれの間』……くだんの小屋においでくださいと」
(まさか……)
いやな予感がしたのりこがクワクを連れて、急いで霧深い部屋の奥に進むと……
待っていたのは、料理人だった。
「――ああ、あるじ。たいへんですわ!」
その視線の先にあるのは、いかにも昭和ふうな木造家畜舎……件の小屋だった。前に一度来たことがあるのでのりこもはっきりおぼえているが、今はそのときの見る影もない。
ぐちゃぐちゃに壊されていた。
たしか、この小屋はちょっとした損傷ぐらい自己修復できたはずなのに、ちっとも機能していない。
まるで解体機械に突っ込まれたように破壊し尽くされてしまった。




