のりこと叔母(続)2の8
「自分がプロスペロの裔であることに強い誇りを持っていて、魔道家として廃れた志魔家を再興させることに命をかけてらした。
自分の研鑽も惜しまなかったし、百合子おねえさまへの教育も厳しかった。 ですから、おねえさまが家を捨てて出たときはショックだったのでしょうね。急激に弱ってお亡くなりになったの」
……うーん、聞かなかったほうが良かったかな。しかたなかったとはいえ、おじいさんとおかあさんとのあいだに問題があったというのは、孫として知りたくなかった。
「あたしに才能があれば良かったんでしょうけど、まるでなかったからね」
たしかに蘭子は復活以来、一度も魔術師らしいところを見せていない。
「ほんとうに幼かったときはそこそこ出来たような気がするんだけど……途中からまるでダメ。そよ風一つ起こせない役立たずになってしまった」
つづけて
「百合子おねえさまの記憶も、とちゅうまではちゃんとあるの。特に、あたしがまだ小さなこどもだったころのことは、昨日のことのようにはっきりとね。
だいぶん年が離れていたからか、あたしにはとてもやさしくしてくださったわ。
――まさか、姉さまが家を継ぐのをやめて、男の人について家を出ていくだなんて思わなかった」
うっ。その男の人って……
「ええ。幹久さま。あなたのお父さまは、ゆかいな方だったわ」
また幹久、おまえか……こまった顔ののりこに、
ランコは朗らかに
「あなたがなにか思う必要なんてなくてよ。すべてはねえさま自身の決断ですもの」
ちょっと遠い目になって
「ねえさまのご気性が変わったのは、たしかに学園で幹久さんとお会いしてからでしょうね。今までなにも考えずに来た自分の家のありかたに疑問を覚えたんじゃないかしら?」
そういや、おとうさんがおかあさんにわるい影響を与えたみたいなことをニセモノ・ランコも言ってたな。
「とにかく、おねえさまが出ていかれ、おとうさまもお亡くなりになって、魔の才が無いあたしだけではやっていけない。志魔家は廃絶した」
蘭子はそこで眉をひそめると
「――ほんと、その後あたしはいったいどうやって生きてたのかしら?シコラクスが支えてくれたということなのだけど、そのあたりの記憶がほんと……たよりないのよね。
そうしているうちにやってきたのが、あのユリコねえさまの同級生……イシュタルの巫女・イニーナだった。あたしはおろかで物知らずだったから、彼女がどんなに危険な存在かちっともわからなかったの」




