のりこと叔母(続)2の6
のりこが叔母に
「美桜ちゃん……それに芽依ちゃんもランコおねえちゃんに会ってほしいな。ふたりともいい子だから、ぜったいおねえちゃんも好きになるよ」
言うと、
蘭子は紅茶を飲みながら
「そう。それはたのしみね」
にっこりとする。
今度は、逆に少女のほうから
「シコラクスさんたちはどう?慣れた?」
たずねると、
小首をかしげて
「そうね。ふたりともまだ旅の疲れが残っているみたい……」
この叔母は気が良いのでやんわり言っているけど、実際のところシコラクス・キャリバンの母子は、蘭子の召使いだというわりに、ちっとも彼女に仕えている感じがない。
母親……シコラクスとは時折ことばをかわしているようだが、彼女が叔母にお茶ひとつ入れているところも見たことない。
「わたしの身体は、あなたの想像する以上に難点を抱えているのです」
よくわからない日本語で寝そべっている。
蘭子は気が良いので気にしていないようだが、同じくあるじに仕える立場であるアンジェリカやクワクの目から見ると、怠慢をこえてあつかましいので眉をひそめている。
息子……キャリバンのほうはもっとひどくて、基本自分にあてがわれた部屋に終日こもっている。
深夜に時折、廊下をうろつくようで、
たまたま出会ったお美和が
「あーっ、びっくりした!キャリバンはん、こないな時間にうろつかんとおくれやす」
と言っても
「……」
だまりこくって、返事もしないそうだ。
大きな体に比べて小さな頭……というより小さな顎で細長い耳。髭をはやしているから、顔つきはほんとうに山羊っぽい。ぶあつい唇に縮れた髪で、奇妙なリズムのひとりごと?を口ずさむ。
「なんや知らん『よぎゅそちょーちゅ』が、うーたらかーたらとか……わけわかりまへんわ」
それでキャリバンに良い印象を持たなかったお美和は、もしかして彼が食材泥棒なのではないかと疑ったのだが、大男はたしかに深夜廊下をうろついているところを監視カメラに撮影されてはいたが、食材庫前のカメラには映ってはいなかった。
「おかしいねぇ……」
とにかく今のキャリバンに対して、復活以前の蘭子を「おキャリはん」と呼んでいたときのような気安さを持つことは無理らしい。




