のりこと叔母(続)2の5
のりこと芽依が言うと、
少女はわらって
「ありがと。でもあたしは学校休めるからラッキーだよ。あたしは、ほら。机にじっとしてるの苦手だから」
美桜が、ほんとうは学校に来ることが苦手であることは、のりこたちも知っている。
もともと、彼女は決まった行動を取ることが苦手なのだ。それに、人の選りごのみも激しく、教室でも芽依やのりこのように本当に気の合うものとしか口もきかない。本質的に、集団活動に向いてない。
のりこは、美桜の個性として別にそれでいいんだろうと思っている。
実は、美桜は授業にまったく参加などせずともよいぐらい頭が良い。
前に美桜がお泊り会で来たとき、彼女とすこし話したメッヒが
「――ほう。美桜さまは、人間にしてはかなり優秀な頭脳をお持ちのようですな。飛び級のある国ならば、すぐ大学に行って学位のひとつやふたつ取っているでしょう」
と、のりこに言っていた。
海外にしょっちゅう行ってるからか四カ国語ぐらい話せるらしいし、なんでふつうの公立学校に通っているのかがわからないほどだ。
一度、気になってたずねたら
「――そりゃ、芽依がいたからだよ。それに、今はのりこちゃんもいるからね」
と言ってくれた。ほんとうによいお友達だ。
「へえ。はやくもどってこられたらいいのにね」
そんな頭の良すぎる彼女だから、多少おつむのなかでヘンなことが起こることもあるのかもしれない、休んだらもとにもどるだろうと超平凡な頭脳を持つのりこは想像していた。
「どうせ泊まるんなら、病院なんかよりのりこちゃんの旅館に泊まる方がいいな」
と美桜に言われたので
「いつでも来てよ」
と言ってある。
(ふつうの)人間がふたたび旅館を利用することに、番頭は良い顔はしないだろうが、そこはあるじの威光でなんとでもする。
のりこは、いざとなったら権力をふるうことをいとわない少女なのだ。




