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あやしの旅館へようこそ!  作者: みどりりゅう


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312/350

のりこと叔母(続)1の12

 旅館への帰り道、クワクはしょげていた。

「……それがし、ランコさま、そしてご親子に失礼な疑いをかけてしまいもうした」


 そりゃ、結婚詐欺師だと思ってたんだもんな。


 しかし、気の良い叔母は

「いいえ。黙っていたあたしが悪かったんです。クワクさんは心配してくださっただけだもの。なにもお気になさらないで」

 ほがらかにわらう。


 のりこも

「そうよ。結局、あなたのおかげで早くお二人を旅館につれてこられたんだもの。よかったじゃない」

 (自分も疑ったことを棚に上げて)はげます。


 主筋ふたりのことばに、男衆蜘蛛は

「……そうでござろうか?それがし、無能で役立たずの蜘蛛になっておりませんでしょうか?」

 気弱な言葉を発する。


 またそんなことを言って。ほんとにどうも、この子は気分のアップ・ダウンがはげしいからな。

「――決まってるでしょう。あなたは有益な蜘蛛の精よ。なんたって、あの偉大なる蜘蛛の王・アナンシの後継ぎなんだから、自分にもうちょっと自信を持ちなさい」


「そうでござろうか……」


 まったく、従業員のモチベーション維持はあるじの大事な仕事とはいえ、大変だ。


 そんなやりとりをしながら旅館に帰ると、アンジェリカが飛び出してきた。

「――ああ!大変ですわ、あるじ!」


 なにごとかと庭にまわると、なんということだろう。

 そこには、ゴミがそれこそ山のようにうずたかく盛られている。

 その山に、さらにせっせとゴミを積み上げるのは、クワクが作った電子の蜘蛛だ。


「やめてちょうだいと言っても、ぜんぜん聞かなくて!」


 すっかり困り顔のからくり女中以上に狼狽したのは、当の電子蜘蛛の生みの親だった。

 クワクは七本の手肢をぶんぶん振りながら 

「ええい。やめぬか、おぬし!もうゴミを掃くのは十分でござる!」

挿絵(By みてみん)

 光る小蜘蛛の前に立ちはだかるが、その脇をすいと抜け、忠実な創造物は作業を続ける。 


 その様子に

「ええい!おぬし、こうなったら動きを止め……と、ありゃ?」

 さけんだ作り手は、はたと自らのひたいを打ち

「……あいや!仕損じた!それがし、こやつを止める呪文を設定するのを失念いたしておりました!」


 えっ、それってなに?止められないってこと?――まずくない?


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