のりこと叔母(続)1の6
「ランコさまがおられるのは、あの店ですな」
クワクが指さしたのは、駅前の喫茶店だ。
遠目にこっそりうかがうと
「あっ、おねえちゃんだ」
たしかに叔母がいる。
待ち合わせていると言うが
「相手はまだ来ておらぬようですな」
蘭子は、スマホを見ながらキョロキョロしている。
「これからどうするの、あたしたち?中に入ってランコおねえちゃんを連れ出すの?」
具体的なことはなにも考えていなかったあるじに対して、
クワクは
「左様な手荒なまねは、できかねます。とりあえず、どのようなものが来てなにを話すかこっそりと見届けることが肝要と心得ます」
「こっそりって……どうやって入るの?このままだと、バレちゃうよ」
ふたりとも旅館の半纏すがたのままだ。
そんな少女の懸念に、
男衆蜘蛛は
「そこはそれ。日本には、古来より優れた変装スタイルがございまする」
ニイッとわらった。
「――おひとりさまですか?こちらへどうぞ」
喫茶店のウェイターの案内にしたがって席に進むのは、ハットを目深にかぶってサングラス、マスクにチェスターコートすがたと明らかに不審なものだった。
不安定そうに頭がふらふら揺れている。不安定なのもあたりまえ。そのものは、クワクがのりこを肩車で背負って服を着る……いわゆる二人羽織だった。
(――クワク。ちょっと右に行き過ぎ。左に半歩ずれて)
(むずかしゅうござるよ、あるじ)
コートの中でのやりとりはたいへんだが、それでもなんとか蘭子の近くの席に腰かける。
ふつうならばおかしさに気づくだろうが、そこはさすがにクワクがその術を駆使してもっともらしく見せていた。顔も変装しているので、蘭子にも気づかれていないようだ。
「あいや、待ち人が来るまで辛抱でござるな」
クワクがささやくやいなや、
それは来た。
喫茶店に入ってきた、ふたりの男女がある。




