のりこと叔母15
……が、
それらを殴り返し、少女を守ったのは
「——おキャリはん!」
ランコの従者たる片目の怪人だった。
「——の、のりこちゃんをいじめるな!」
威嚇して遠ざける。
それを見て興ざめしたのは、あるじたるランコだった。
「キャリバン……あんた、なにしてくれてんの?天使のみなさまがたの邪魔なんかしちゃ 駄目じゃない」
冷え切った声で言う。
しかし、従者は片方だけの目をショバショバさせながら
「だ、だけどご主人さま。のりこちゃんは守らないと……こんなちっちゃい女の子を……」
「この場におよんで、あなたの博愛精神なんていらないのよ。あんたは、あたしの言うことにしたがっておけばいいの。とっとと、そこをおどきなさい」
あるじに言われてキャリバンは少し惑ったが、目をさらにショバショバさせると、やはり首をふって
「——そうはいかない。この子に手を出すのはまちがっている。ご主人さまがまちがっている」
はっきり言った。
そのことばに、ランコはまなじりを裂いて
「まちがっているですって!?この使い魔ふぜいが、あたしに逆らう気か!そんなことをすれば自分がどうなるか、いくら頭の弱いお前だってわかっているだろう!?」
主人の怒気に、キャリバンは真っ青になってふるえたが、しかし
「だめ……のりこちゃんを傷つけるなんてだめ。あなたは……あ、頭がおかしい」
そのことばに、ランコはみにくく顔をゆがめて
「あたしにさからうとは、ならばその報いを受けるがいい!このできそこないの欠陥品め!——アブラカタブラ!」
そのことばをあびせられたとたん
「ウッ!!!」
キャリバンの表情は苦悶にゆがみ、血を吐いた。
「おキャリはん!」
のりこは自らをかばってくれたものにとりつくが、どうすることもできない。
ランコは冷ややかに
「……おろかね。隷属契約に縛られたものが主人の命令に背いたら、どんなことになるかわかりきったこと。体中を耐えがたい苦痛が走り、その末に命をなくすに決まっている……ほんとうに、お前たち一族はバカものぞろいね。そんなだから、すべてを失うのよ」
「やめて!おキャリはんを助けて!」
涙を流して訴える少女に向かっても、さらに冷たく
「なにを泣いたりしているの?たかが使い魔一匹に……まったく、そんな湿っぽいところは母親にそっくりね!あの女もそんなふうだから、自らの身を犠牲にしてアチラモノを救ったりした。バカはバカ同士、とっとと死になさい!」
そのことばに応じて、天使たちが槍を突き立ててくるが、それをすべてキャリバンは身で受け止め、少女をまもる。
「のりちゃんは、だいじょうぶ……」
そのうつろになる目に、血を浴びながらのりこは呆然とするが、その後
「——よくも!!」




