のりこと叔母13
「「……そんな。そんな解釈は今までなかったぞ」」
「尊いみことばの解釈が、そんな簡単にわかるように施されるはずないでしょう?ギリギリまでわからないからこそ、値打ちがある」
「「お——っ!なるほど!」」
なにが「お——っ!」だ、と少女は聞いてて思ったが口には出さない。
「「では、黙示録における小羊とはなんだ!?」」
聴衆の問いに、
ランコは手を広げて高らかに
「それはもちろん、神に対する新たな贄よ!新たな犠牲が捧げられることによって、すべてを精算する善と悪との戦いが始まるの!」
新解釈を披露した。
「「そんな!?では一体、その小羊とやらはどこにいる?」」
聴衆の当然の問いに、
ランコは自信たっぷりに
「それは今、この旅館にみなさんが集まったことで明らかに暗示されている。
七つの封印……それが七つの異世界への扉を暗示しているとしたら、どうかしら?
その鍵を持つものこそが、封を解く小羊ということに他ならないんではなくて?」
(……なんだと?)
最初っから、叔母の言っていることなどチンプンカンプンで聞き流していたのりこだったが、さすがに今、話が急に変な方向に流れたことには気づいた。
にわかに、天使・堕天使たちが自分を見つめる目が熱を帯びた……というか、こわい。
「この旅館のあるじ……ここにいる少女こそが、新たな『小羊』よ!その子の血が流れた、そのときこそハルマゲドン……あなたたちがお望みの最終戦争が始まる!」
「ちょ、ちょっとおばさん!」
あまりの衝撃発言に、叔母の顔を見直す少女を
「——ごめんなさいね、のりこちゃん。でもいつの時代にも犠牲というものは求められるのよ。短い間だったけど、あなたはとても良い姪っ子だったわ」
おそろしくあっさりと見捨てた。
あまりのことに、のりこは
「ま、まって!あなたたち天使でしょ!?天使があたしみたいなキュートで愛くるしい少女を傷つけていいと思っているの!?」
恥も外聞もなく自分が子どもであることを利用しようとしたが
「「こひつじ!こひつじ!ささげよ!ささげよ!主のために!」」
天使や堕天使たちの目つきは、すっかりおかしくなってしまっている。
どう見ても異常な状態だ。
「……ふふ。どうやら『これ』は天使たちにもこれは効くようね、安心した」
いつの間にか、黄金の盃型の奇妙な機械を手にしている叔母に対して
「それはなに?」
問うと
「一種の催眠装置よ。アチラモノ・・・・・・異界存在の精神を契約なしで誘導する、とんでもない発明品よ。まあ原型を作ったのは、あなたの父親・幹久だけど」
(また、おとうさん!?まったくあの人ときたら、会ったこともないくせに娘にろくなことをしやしない!)




