のりこと叔母2
そんなやりとりをしていると
「あ〜ら、失せ物ですか?なんならあたしがお手伝いしましょうか?」
なんと、かってに部屋に入ってきたのは、あるじの母方の叔母・ランコだった。従者のキャリバンを引きつれている。
「あっ、おばさんかってに人のお部屋に入っちゃ駄目だよ」
姪のもっともなことばにも
「そうは言うけど、あたしの家は代々、占い……失せ物さがしが得意なのよ」
かってに言いつのると胸もとから振子と占盤をとりだして、ちょちょいと操作する。
「——なにかしら?この出てくるシンボルは……獣?それも、とても強大な力をもった禍々しきものね……」
「けもの?」
ランコのことばに、のりこは首を傾げるが、天使長は表情を変える。
そして
「うるさい!この呪われた異教徒の女め!詮索すると、ためにならねぇぞ!」
わきから怒鳴ったのは、いつのまにかもどってきていたらしい死の天使・サリエルだ。
もともと不機嫌そうな顔をさらにいがめて
「おい、ミカエル!そんなところで油を売っている暇はない!さっさとヤツを探すんだ!万が一外に出られては、世界のおわ……いや、おれたちの責任問題になる!」
「あ、ああ、そうだったね。うむ、確かにぼんやりしているひまはない。おじょうさんがたにはお引取り願おう」
と、のりこたちは体よく部屋から追い出された。
「おお、こわ。死の天使さまを怒らせて命を持っていかれてはこまるものね。それにしても『のろわれた異教徒』だなんて、あいかわらずあの宗派は失礼ね」
ランコは、からかいまじりのおおぎょうなそぶりを見せる。
もちろんのりこはサリエルやミカエルの正体をもらしてなどいないが、そんなことをせずとも彼女は正確に彼らの素性をつかんでいるようだ。
占いが得意というのも本当かもしれない。ということは……
「おかあさんもそういうことができたの?」
のりこが問うと、おばは
「ユリコ?やろうと思えばできたでしょうけど……あの子は自分の能力を有益に使うことをしなかったわね」
わからない言い方で返した。
「あなたのお母さんは、正直あたしよりずっと優れた資質をもった術師だったけど、その力の使い方をあやまった……無用な人助けなんかに使ったりしてね」
ひとだすけ?
ならいいじゃない?一番いい使い方でしょ。
ランコは姪のことばを鼻でわらうと
「魔術師の本分は、そんなことにありはしない。魔術師の求めるものはただ一つ。この世界の力の根源をのぞくことよ」
ちからのこんげん?なにそれ?
「その求めの妨げとなるものはいかなるものも排除すべき。他者を助けるなどとのくだらぬもののために自らの手の内をさらすなど、隠匿を重んじる魔術師にとって一番避けねばならぬものよ」
意外と真剣な口調で言った。




