のりこと霧の部屋6
ひろったらしい腐りかけの魚肉ソーセージを、きたない乱杭歯でかじっている。
のりこがあっけにとられていると
「――どしたよ?兄弟分」
「――なんだ、なんだ?」
土管の中から続々とあらわれ出たのは、さまざまな色や背たけや模様の、しかしそのどれもがガラの悪そうな中年のおじさんの顔立ちをした犬たちだ。
「なんだ。人間じゃんかよう」
「めずらしいな」
「ひさしぶりだから、かじってやろうか」
「そうだな、それがいい」
「かじろう、かじろう」
(なんだよ!これじゃ、この前のグールとまるっきりいっしょじゃない!)
前回の反省のもと、すばやく駆けて逃げ出したのりこのうしろから人面の犬たちが追いかけてくる。
のりこはかけっこは得意なほうだが、それでもやはり少女の足で野犬の群れからにげきるのはむずかしい。
(どうして、あたしばっかりこんな目に会うの!?)
いまにも追いつかれ、かみつかれようとした、そのとき
――シュッ!
体になにやら巻きついたかと思うと、少女の体はギュギュギュイ――ンと上に引っぱり上げられた。




