表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あやしの旅館へようこそ!  作者: みどりりゅう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

273/350

のりことまるっこい客8

「いやだね」

 のりこと番頭につきそわれたマルコの願いを、サリエルはすげなく拒否した。


 その前にはミゲルが合い向かう。

 ここは「無量の間」の露台バルコニー。ふたりのあいだには8×8の64マスからなる盤面があり、そこに白黒16個ずつの駒が置かれてある。彼らが勝負しようとしているのは、なんてことはない。ただの西洋将棋……チェスだったのだ。


 黒い駒をセッテイングしながらサリエルは

「……そいつはさっき、おれにおそいかかろうとした。なんでそんなやつに、せっかく手に入れた楽器をくれてやらないといけない」

 陰気な声で言った。


「じゅうぶんな代金は支払うつもりだそうですよ」

 メッヒの口添えにも


「ふんっ!カネなんかでおれたちの取引が成り立つはずないだろう……そんなことは、おまえが一番よく知っているはずだ」

 横目でにらむ。

挿絵(By みてみん)


「……このチャランゴは、あるインディオ呪術師の債務のばしのカタに手に入れたものだ。そこそこ気にいってるから手放す気はない。もし、これがほんとうに欲しいって言うんなら……わかるだろう、番頭。上質なブツと引き換えだ」


「ブツ?」


 のりこの問いに、サリエルはニタリと口を笑み曲げて

「そりゃもちろんコチラモノ……人間の魂だよ、おじょうさん。わしが欲するのはそれのみだ」


「おれのたましいならいくらでも……」

 マルコの叫びに


「人間でもないおまえのたましいなど、なんの価値もない!……そこのおじょうさんが代わりに魂を差し出すって言うんなら、よろこんで引き渡すがね」


「うちのあるじのたましいをそんなことで安売りできませんね」

 のりこが答える前に、番頭はきっぱり言う。


 向き合いながら駒を並べるミゲルが

「——あいかわらずねじけた奴だね、君は。そんな言いぐさ、まるっきり悪魔といっしょじゃないか。今はともかく、元は高貴な存在であることを忘れないでほしいがね」

 口をはさむと


「すっこんでろ、このいいカッコしぃが!こっちの商談に口をはさむんじゃねぇ!だまって駒並べやがれ!」

 口汚くののしると、のりこたちに向かって

「——とにかく、おれたちゃこれから大事な勝負だ。ヘタな邪魔いれをするんじゃねえぞ。これの重要さは、おまえだってわかるはずだ」

 重く言う。


 その言葉にはミゲルもうなずいて

「それはそうだ。気の毒だが、実際問題として、今わたしもその子の助けにはなってあげられない。サリエルの言うとおり、今から始めるこの勝負のほうが、人類にとってははるかに重要なのだからね。邪魔が入らないように注意してくれよ、番頭」

 念を押す。


「それは重々承知しております。静かな環境の提供を心がけます」

 メッヒも、うやうやしく両者に頭を下げる。


「——よし、はじめるぞ」

「——ああ」

 そして、似た顔のふたりは盤上の駒の動きに没頭しだした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ