のりこと大工たち9
「まあ、彼らに食われてしまうよりはましだと思いますよ」
そう言うメッヒの目の先にいるのは、巨人トロルの職人たちだ。お美和が用意した生肉……もちろん人間のものではなく、牛や羊の塊肉に一心でかぶりついている。
魔術師の従魔……キャリバンというのにはじき飛ばされ、駆け付けたお美和やアンジェリカにとりおさえられたあと、さしだされた肉を食べることによって、落ち着きを取りもどしていた。
「もごもご……そうだ、暴力はよくねぇ。野蛮だど、番頭」
先ほど自分たちの取った行いを棚に上げて言う。
ただ純粋に、めちゃくちゃ腹を空かせていたのだ。
番頭は
「あなたへ渡した代金は、そっくりすべてトロルにわたしてもらいますよ。そのうえで、彼らにはちゃんと旅館を修理してもらいます。あなたたちもそれでいいですね?」
ニッセに宣告したあとトロルたちに問うと、肉をかじりながらうなずいたが、ひとりがぼそっと
「……目ん玉があるといいんだけどな」
つぶやいた。
たしかに彼らには目玉がない。話によると、前には目玉を一つ持っていて、それを順繰りにつかっていたそうだが、とある北欧の英雄にその大事な目玉をだましとられて以来、目も見えないまま商売を続けてきたらしい。
おかげで、それまでは技術の高い大工として羽ぶりよくやっていたのが落ちぶれてしまい、それで故郷から逃げるようにこの国に流れてきたらしい。
(まあ、かわいそう……って、あれ?一つの目を三人で共有って、それってまるっきり……)
のりこが思い出したのは、前にメッヒが魔女ヘクセをだますために化けた、おそるべき三姉妹グライアイのことだ。彼女らも一つの目の玉を共有しているそうだが………。
(ギリシアと北欧。――ふうん、似たような話ってどこにでもあるのね……ってことは)
のりこが従業員部屋のペン立てからもってきたのは、チュッパチャップスのように黄色い……月人からもらった目の玉だ。
ヘクセに恩を着せるためグライアにわたしたけど、その正体はメッヒだから結局手元に帰ってきた。こんなもの(と言っては、くれた月人にわるいが)使い道もないからペン立てにぶらさげていたのだ。
「これ、あげるよ」
巨人たちはひどく喜んでいた。
「こりゃ丈夫でいいで」
そもそも三人のうち一人も目が見えずに、よく大工仕事なんてできてたものだ。




