表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あやしの旅館へようこそ!  作者: みどりりゅう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

259/350

のりこと大工たち5


「……なんだかたよりない感じだったけど、ほんとにだいじょうぶ?」


 のりこの問いに、番頭は妙にニタリとして

「……そうですね、ちょっとくさいですね。私は職人たちと話をしてきます」

 なんだか、楽しそうに奥にもどった。


「旅館の修理って、たいへんなのね」

「左様。特に新規の業者を入れる場合は、むずかしいものでござるよ」

 のりことクワクが話していると、おとないがあった。



「たのもう!!」

 

 ——タノモウ?なにその言いぐさ?それじゃあまるっきり……


 のりこが口をひらく前に

「うぬっ!さては道場破りか!?当館の看板は、それがしがわたさんぞ!」


 時代劇好きの従業蜘蛛が反応しちゃった。ウチは道場じゃなくて、ただの旅館だってば。


 そんな時代はずれなことばを発して旅館に入ってきたのは、ふたりづれの客だった。


 先に立つのは、30代ぐらいだろうか、トーク帽に千鳥格子ハウンズ・トゥースのコートをまとった一見エレガントそうな女性だった。

 その後ろにしたがって立つものは(この旅館ではともかく、ふつうの世界では)ちょっと異様で、大きな体に動物の毛皮をまとったいわゆる山男スタイル、左目がつぶれているがのこった右目をギロギロさせている。

挿絵(By みてみん)

 どうにも、かわった組み合わせだ。


 トーク帽はクワクのことばに 

「あら……だれも、こんないかがわしい旅館の看板などいらないわよ」

 手にしたケリー・バッグをゆらしながら、吐きすてるように言った。


(——いかがわしい、ですって!?)

 そんなセリフ、番頭が聞いたら目をいからしているところだ。


 のりこだって、大事に思っている自分の家をそんなふうに言われて気は悪いが、そこは客商売、精一杯愛想よく

「いらっしゃいませ!……なにかご用でしょうか?」

 頭を下げた。


 トーク帽は、そんな半纏すがたの少女を値ふみするようにじろじろめると

「あなたはなに?」

 問いを無視してたずねてきた。


「——あたしは、この旅館のあるじです」

 すでに番頭に負けないぐらい旅館にほこりを持っている少女あるじは、多少胸をはって言った。


「あるじ?……ということは、あなたがユリコの娘?」

 女のするどい声に


「そうですけど……」


 急に母の名前が出てきて戸惑う少女に対して、トーク帽は

「なら話が早いわね――さああなた、あたしたちといっしょにおいでなさいな。このような伏魔殿に、あなたのような子がいつまでも居続ける必要はないわよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ