のりことお友だちのお泊り会24
そして
「それより、あの青い鳥……カササギがあたしたちの探してたドロボウだったんだね。
まさか、旅館のなかで小鳥がドロボウを働くなんて思ってなかったよ」
メッヒもそれには苦い顔で
「西洋では、カササギはピカピカとしたものが好きでドロボウを働くものとされています。実際に自然界に生きるカササギはそんなことしないんですが、あれは作りものですからそんなまちがった性質を持っていたのでしょう。
カササギはわれわれの把握していない部屋を経路にして、館内を飛び回っていたようです」
「あたし、てっきりそのヤツガシラってのがドロボウなのかと思った。廊下であたしの鍵をうばおうとするんだもの」
のりこのことばに答えたのはラビだ。
「それは、あの仙人人形のとっさの虚言だな。わしはヤツガシラをつかって、あなたに危険を知らせようとしただけだ。
われらが古の王の名を冠した聖なる遺物に手を出そうなどとはせんよ」
ほほえむと
「――なんにせよ、わしの旅もこれで、やっとおしまいをむかえることができた」
そう言うと、手に入れたばかりの「ダビデの星」……羊皮紙に、火をつけた。
「あっ!燃やしちゃっていいの?」
少女の問いに、老人は
「ああ。この呪符を破却するためだけに、わしは師によって不自然にこの世に永らえさせていただいたのだ。わしの肉体もまたこの『ダビデの星』と連動している」
――あっ!老人の体が、足元からぽろぽろとくずれていく!
「……やっとこれで、わしも最後の審判を与るその日まで眠りにつくことができる……すまんが番頭、わしの部屋に置いたものはすべて処分しておいてくれ」
「かしこまりました。よいお旅を」
「ああ、ありがとう」
そして、のりこに向かって
「おじょうちゃんにも世話になった、ありがとう。さらばだ」
そのことばを最後に、ちりとなってくずれさってしまった。
後にはなにものこらない。
「――文字どおり『灰から灰に、塵から塵へ……』ですね。
悪魔の私が聖書の一文を口ずさむのもなんですが」
こういうお客さまのご出立ははじめてだった。




