のりことお友だちのお泊り会22
「アッ!……チキッ……ショ……ゥ……」
とたんに回転木馬、そしてにせロイを含めたすべての人形・書き割りの動きがおそくなり、ついには止まった。
同時に、遊園地の上空にピキピキとガラスが割れるようなヒビが入る。
「アニマの供給が止まって、空間の維持ができなくなったんですね。とっとと出ましょう。クワク」
「かしこまった!」
のりこを抱きあげた悪魔番頭、そして、しばられていた少女ふたりを救い出し抱き上げた男衆蜘蛛は、崩れた空間のすきまに飛びこんだ。
出てきたのは、納戸部屋だった。
からくりを見ると、のぞきこむガラスが割れて、なかの装置の動きも壊れたように止まっている。
「だいじょうぶですか?あるじ」
番頭におろされたのりこは
「あたしはだいじょうぶ。それより、芽依ちゃんに美桜ちゃんは?」
男衆蜘蛛が抱えた級友ふたりにかけよる。
クワクは
「問題ありませぬ。いまは生気を少し吸われて気を失っておられますが、明日の朝起きれば、元気満々でござろうよ」
そのことばに、少女はほっとして
「よかった……ほんとによかった」
脱力したのりこに、ヤツガシラを肩にのせてからくりから出てきた老ラビが声をかける。
「――やれやれ。とんだ目に会いなさったな、おじょうさんがた。まさか師の『ダビデの星』がこんな使われ方をされておるなど、想定外じゃった」
そのいかめしい口ぶりに、顔をあげた少女は問うた。
「ラビ、いったいあなたはなんなの?あたしが廊下で見た鳥の中にも文字が描いてあったけど、メリーゴーランドに貼ってあったのと同じなの?」
ラビは、ヤツガシラから呪符を受け取ると
「いや。この偉大なるわが師レーヴの手蹟と、わしが粘土鳥をうごかすために書いた粗末な文字とでは、そのアニマは比較にならない……。
この師の書いた『ダビデの星』を探し求めて、わしは長い時をすごしてきたのじゃ」
そして老人は、師の呪符、そして自らの来歴を語りだした。




