のりことお友だちのお泊り会17
のりこと仙人は遊園地にいた。
「入っちまったなぁ」
「美桜ちゃんたちはどこに?」
あたりを見わたすと大勢の客がいるが、友だちの少女らしきすがたは見えない。
「聞いてみるか?――おう、ちょいとものをたずねてえんだが」
仙人が目の前を通る客にたずねるが、反応がない。
「おい、ちょっと……」
つかもうとすると
――ペラリ。
厚みのない紙のように折れ曲がる。
「チイッ、ペラ絵か。まったくこりゃ、立体と平面絵を組み合わせたジオラマみたいな世界だな」
「あれはちがうよ」
ペラペラの客たちに風船を配っているリスのキャラクター着ぐるみには厚みがあった。人が入っているようだ。
のりこはかけよって
「あの、ちょっと聞きたいんですけど……このあたりで、あたしみたいな浴衣すがたの女の子たちを見ませんでしたか?」
リスはかわいげに何度か首をかしげると、少女を手招いた。
「えっ、なに?」
のりこが思わず顔をよせると……
「――あぶねえっ!」
リスが少女に刺さんと持ち出したのは、キラリと光る包丁だ。
それを、仙人が剣ではらった。
「なにしやがる、べらぼうめ!」
はじき飛ばされたシカは、シッポから替えの包丁(何本持ってんだ?)を取り出して二人を刺しに来る。
「きゃっ!」
「ちぃっ!」
仙人は少女の手を引いて、駆けて逃げる。
リスの後ろから、さらにペラペラの客たちも追いかけてくる。
「なんだよ!?」
「どうやら、お嬢ちゃんを異物だと判定したみたいだな……よし、ひとまずあれに乗るぞ!」
そう言って飛び乗ったのは、すでに走りはじめていた小型の観覧コースターだ。
リスや観客も追いつくことはなかったので、ひと心地つく。
「なに、あれ?なんで追いかけられなきゃいけないの?」
「入園料を払ってないからかね」
「だからって、いきなり包丁で刺す?」
「……まあ、望まれぬ客ってとこだろうな」
コースターは、高いレール上を伝って園内を回るようだ。
「一周したら、またあそこにもどっちゃうよ」
「なに。その前にどこか適当なところで下りちまえばいいさ。……しかし物騒な遊園地だな。こうしてのんびり上をまわってるうちに、嬢ちゃんのダチを見つけられたらいいんだが……」
機関車は、大きな蛸のアトラクションの周りをまわる。
上下に揺れる八本の足に興じたいところだが、そうは行かない。
のりこは友だちを見つけようと必死で園内を見下ろし探す。
「――きゃっ。やめてよ、おじさん」
「なんだ?」
「だから、急に首筋とかさわんないでよ。びっくりするじゃない」
「オレはそんなことしてねえよ」
「……えっ?じゃあ、これは?」
ふりかえった少女の体を、ぬらくらとした巨大な蛸の足が巻きつけ持ち上げる。
「きゃっ!」




