のりことお友だちのお泊り会5
転校だらけの転々とした暮らしをしてきたのりこにとって、ちゃんと学校の同級生と友人になるということ自体が、初めての経験だった。
今まではクラスメートとそこまでふかく付きあうことをしてこなかった。
少女なりに、どうせすぐ離れるから親しい付きあいはない方が良い、と無意識のうちに思ってきたからだ。
しかし、今度はちがう。
このかむのという土地にやってきて数か月しかたっていないが、のりこはここが好きだった。
旅館の従業員たちも好きだし、それとおなじように学校の友だちも好きだった。
できれば、もう転校するなんてことなく、この街にずっと居つづけたいと願っている。
そして、やっと出来た友だち……美桜や芽依たちと、ずっと仲良い関係でありたかった。
そんなのりこにとって、今回のお泊り会はただのお泊り会ではなく、それこそ人生がかかっているものだ。
のりこは、美桜と芽依に「よく」思われたかった。
のりこは、自分が親がふつうにいる子とはちがう……すくなくとも、他人からはちがって見られているということがわかっていた。
さらに今は、こんなかわった旅館のあるじまでしているんだから、ふつうの子とはいろいろ差があるんだろうと、自分で決めつけていた。
その差をのりこえて芽依たちとよい関係をつくるためには、従業員たちに多少無理を言っておかしく思われたってかまわない。
なるべく良い接待をして、楽しんでもらって、自分と友だちになってよかったと、二人のクラスメートに思ってもらいたかった。
不気味に思われたり、こわがられるなんてもってのほかだ。
玄関の食人花も、万が一かじりつくことがないよう檻に入れてしまってある。
気をつかえるところは、みなつかうつもりだった。
少女たちが旅館の奥に案内された和室は広くて、とても立派だった。
柱や欄間、調度品のつくりが高級そうなのは、こどもの目にもわかる。
玄関ロビーや廊下はふつう、というかぼろぼろといっていいぐらいなのに。
「――そう?まあ、あのおばさんはぜいたく好きだったからね」
のりこによると、この部屋は客室ではなくて、海外に旅行中だというのりこの叔母がつかっていた部屋らしい。
ふだん、のりこはもっとせまい部屋で寝ているが、今日は三人いっしょで過ごせる広い部屋が良いだろうと、番頭が用意してくれたのだと言う。
「やさしい番頭さんだね。マンガに出てくる執事みたいでカッコイイし」
と美桜が言うと、のりこは顔をいがめて
「やさしい?あいつが?そんなまさか。あの悪……メッヒはあたしたちのことなんて考えてないよ。お客さまに迷惑をかけないようにというだけ。
この部屋なら、客室とは離れてるから、多少さわがしくても問題ないからってさ」
どうも、少女あるじと番頭の関係性は微妙なものらしい。




