のりことお友だちのお泊り会4
「――あるじ。おことばですが、他のものはともかくこのメッヒは業務に対して常に気合を入れております」
不服げな番頭に続いて
「それがしとて、そうですぞ!つねにこの七本の手肢を駆使して大活躍でござる!」
クワクも息巻いた。
それに対して、あるじはけわしい表情で
「それがよくない!……いい?なんべんも言うけど、芽依ちゃんも美桜ちゃんもふつうの子なんだから、すこしでもあやしいまねしちゃだめだよ!
手肢が七本だなんて、そんなバケモノまるだしのことしちゃダメ!手と足は常に二本ずつ、あわせて四本!わかった!?」
その荒い口調に、男衆蜘蛛はしょげて
「バケモノ……あるじは、それがしのことをそんなふうに見ておられたのか?」
「――気にしたらあかんよ、クワク。今のあるじには、ことばを選んでる余裕がないんですわ」
今日はふだんとちがって、館内でもマスクをした料理人の口裂け女・お美和が蜘蛛をなぐさめる。
番頭は
「――たしかに、われわれも少し気をつけた方がよいかもしれませんな。
美桜さまはともかく、どうやら芽依さまというお子さまには多少霊感……われわれ異界のものをとらえる感覚がおありのようです。さきほどクワクの背中の肢が動いたとき、反応なさっておられました」
「じゃあ、なおのこと気をつけないと!」
あるじの興奮に、番頭はわざとゆったりと
「――ええ。しかし実際問題としては、そこまで気をつかわずとも好いかと存じます。あるじのようにはっきりわれわれをとらえることのできるもの……このあたりのことばでいうサカイモノなど、めったにおりません。あの少女にしても、なにやら違和感を感じた程度です」
「それでも!気味わるがられるなんて論外だよ!」
のりこは、従業員たちから見たらおかしいぐらい、このお泊り会に神経をとがらせていることを自分でもわかっていた。
わかったうえで、ピリピリとがらせているのだ。




