のりことお友だちのお泊り会1
「ようこそ、いらっしゃいませ!
芽依ちゃんに美桜ちゃん!」
「――こ、こんにちは。のりこちゃん……」
前もって聞いてはいたが、じっさいに「綾石旅館」と書かれた半纏をまとって出迎えた同級生に、少女ふたりはおどろいた。
「……ほんとうにおうちの商売を手伝っているんだ?すごいね、のりこちゃん」
古びた旅館のようすに興味津々で問いかける美桜に、
のりこは
「手伝いって言っても、お客さまにごあいさつするだけだよ」
あかるく言うが、少女……特に内気な芽依からしたら、見ず知らずの人に対して大きな声をかけるなんて、十分すごいことだった。
「じっさいの仕事をしてくれてるのは、ウチの従業員さんたちだよ」
そう言ってふりかえった先には
「――ようこそおいでくださいました、のりこお嬢さまのご友人さまがた。
わたくしめはこの綾石旅館で番頭をつとめさせていただいておりますメッヒともうすものです」
「――おなじく男衆のクワクでござる。以後、お見知りおきを願いまする」
のりこの後ろに控えてうやうやしく挨拶をする二人は、どちらも外国の人らしい。
外国からのお客さんが多いと言っていたからそのほうがいいのだろうが、やっぱりちょっと面食らう。
「のこりの従業員さんもあとで紹介するね。みんな家族みたいなものだから」
のりこのことばに、黒人少年が感激する。
「――くぅっ。あるじがうれしいことをおっしゃってくださいまする」
「あるじ?」
びっくりする美桜に、のりこはあわてて
「ああ、名目上だけね。なにせ今おとうさんがいないから」
サラリとすましたが、それにしたって小学生で旅館のあるじだなんて、すごい。
たまにのりこちゃんがみょうに大人びて見えるときがあるのは、そういうところからだろうか?
一方、芽依はそれとは別に、クワクが感動のそぶりをみせた瞬間にその背中がモコッともりあがった気がしておどろいた。
美桜ちゃんは何とも思わなかったようだし、ただの気のせいだろうか……
そんなことを考えていると、ふと番頭の自分への視線を感じてゾクッとおそろしくなった。
(……って、あれ?なんで今、あたしはおそろしく思ったりしたんだろう?
とても態度のやわらかい、上品な番頭さんなのに)




