のりこと純真なお客8
でも、たしかにのりこもその古物商との交渉は心配だ。
ちゃんと見といてやりたい。
考えをカリアに伝えると、ピュアなハーフ天女は驚いて
「そんなことありませんわ。あの方は親切なお方だと思います」
と言ったが、みんなに言われているうちに
「……そうでしょうか?では、ごいっしょいただけますか?」
にっこりクワクにほほえんだ。
「お、おまかせあれ!」
蜘蛛は顔を真っ赤にして胸に手を当てた。
会合から帰ってきたメッヒに、お客さんの交渉に立ち会うことになったと報告すると、番頭は眉をひそめて
「……私がいないまに、かってにそんなことを決めたのですか?
お客さまのプライバシーには立ち入らないように注意しておいたでしょう?」
「へへっ、そうだけどさ。話のぐあいでそうなっちゃった」
一連の流れを説明すると
「……まったく、あの上仙ときたら――しかし、お客さまがよいとおっしゃるのであれば、しかたないですね」
「あ、いいの?」
もっとはげしく反対されると思っていたから、意外だ。
「お客さまが求めることであれば、かまいません。サービスの一環です。
ただ、われわれが交渉の場に立会うとしても、どちらかに肩入れするような発言は一切しないよう注意してください。旅館としては、あくまで交渉の場と立会を提供するだけです。両者の利害に立ち入っては絶対にいけません。
それらはすべて呂洞賓にまかせてください。
彼がなにを言おうとしようと、それは彼個人がかってにしたことで、旅館に関係があることではありませんから」
あとで旅館に危害がおよばないように仙人をつかう気らしい。
さすが、悪魔らしい立ち回りだ。
「それにしても、あのお客様はアプサラーでしたか……気配をかくしていたので、何者なのか私にもわかりませんでした」
「あなた、アプサラーって知ってるの?」
「それはまあ有名ですからね。アプサラスとも言います。
私はかつてインドでも仕事をしたことがあります。死神とちょいともめましてね」
あっ、そういや前に魔女がそんなこと言ってたな。
メッヒに命じられて象の神様の牙で作ったサイコロをぶんどったとか……。
「ヤーマ……たしか、こっちでは閻魔と言うんでしたか。
まあ単純な男でしてね、おかげでずいぶん多くの無辜なたましいを引っ張ることができましたよ。ククククク……」
昔のことを思い出したのか、わらった。どうせ、ろくなことしなかったんだろう。
「それはともかく、アプサラーの水浴びの話は有名です。『羽衣天女』のモチーフは世界中にありますが、その源典ともいわれています。
しかし、そのあとガンダルヴァともめた話は私も初耳でした。
『ラーマーヤナ』にも、そんなところはなかったように思います」
「らーまー……なにそれ?」




