のりこと純真なお客7
ほんと。
最初は日本むかしばなしみたいなほのぼのとした話かと思ったら、かなりハードな展開じゃん。
「東方の島に手がかりがあると聞いたあたしは、この国へとやってきたのです。そして蚤の市で、ひとりの親切な同郷者に巡り合いました」
「どうきょうって、おんなじインドから来たってこと?」
「はい。古物商を営んでいらっしゃるというその方は、あたくしの話を聞くと、なんとそのガンダルヴァの城をしめす手がかりに心当たりがあるとおっしゃいました。
そして『あたくしのような娘一人での旅は危ない。自分が代わりにその手がかりを手に入れてきてやるから、旅館でじっと待っていろ』と、親切にもおっしゃってくださったのです。
そして今、待っていたその連絡が来たのです」
カリアがひろげた電報には
「ブツヲ テニイレタ リョカンニテ マテ」
と書かれてあった。
「……でも、ただの親切でそんなことしてくれたの?」
のりこの疑問に、ハーフ天女は
「いえ。もちろんこれは、ちゃんとした取引です。あたしも代金代わりの品はもっています。……しかし、あたしが持っているものといえば、おっかさんからもらったこの石だけなんですけど」
そう言ってサリーのふところから取り出したのは、真っ赤に輝く大きな宝石だった。
「ただむやみに赤いだけでそんなに値打ちはないんでしょうから、先様には申し訳ないんですけど……」
とカリアは言ったが、その宝石はどう見ても上等品にしか見えなかった。
少女と仙人、そして蜘蛛従業員はハーフ天女とはなれて談合した。
「――だいじょうぶだと思う?」
「そうだな。そんなたまたま蚤の市で会った古物商が、天人の城の手がかりを知ってるなんてあるか?オレでもそんな城なんて知らねえぞ」
仙人のことばに、のりこも
「だよねえ。あたしもそう思う」
「それにあの紅玉は値打ちものだろう?天女の母親がのこしたものって言ってんだから。
――心配だな。ああまで純真な娘なら、こう言ってはなんだが、いくらでもだませるぞ」
たしかにあのハーフ天女の純真さは、小学生ののりこから見てもあまりにピュアピュアしていて心配になる。
「あのお方は親切なお方です。なにも心配いりません」
なんて、ただただ純真無垢できれいな目で見つめてくるんだもの。
ああいうのをほんものの天真爛漫っていうんだろうな。
クワクは
「あるじ。こうなったら、われわれがあの娘御と古物商やらとの交渉に立ち会ってはいかがか?
われらしっかりとした料簡を持ったものが、先方の性根を見極めてやりましょうぞ!」
鼻息荒く言う。
まったく、お気に入りの女の子にいいとこ見せようとして。




