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あやしの旅館へようこそ!  作者: みどりりゅう


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のりこと純真なお客6

 ラウンジにこしかけると、美しい天女のハーフ娘は話を始めた。


「あたくしはカリアと申すインド娘でございます。

 南部にあるチェンマイという街からまいりました。

 そして先ほど申しましたように、あたくしの母は天女……アプサラーでございます。


 アプサラーは、ふだんは天界で神さまに踊りを供じたりしておつかえしておりますが、地上界にもときおり水浴びをしに下りてまいります。

 母も姉妹でガンジス川に下りてまいったのでございますが、水浴びしているところをとある人間の男にみそめられまして、夫婦になりました。

 そうして生まれたのが、あたくしでございます」


 ふうん。なんだか日本の「天女の羽衣」みたいな話だね。


「父と母、そしてあたくしは幸せに暮らしていたのでございますけど、天界では、母が下界の人間と夫婦になって子までなしたことを喜ばしく思ってくれませんでした」


「ああ、他の天人とのからみだな?」

 天界の事情に通じているらしい呂洞賓が、口をはさんだ。


「はい。アプサラーの娘は『ガンダルヴァ』という別の天人族と夫婦になるのがならいでございます。

 母にも将来を約束したガンダルヴァがおりましたが、彼は下界に下りた母のことをわすれず執着を持ち続けておりました。

 そしてついにある日、ガンダルヴァはその強力な力にまかせて母を強引につれかえってしまったのです」


 えぇっ!?なにそれ、最悪!!フラれてるのにしつこい……

 ただのストーカーの誘拐犯じゃない!!

 のりこは女性として、当然の怒り声をあげた。


「そうですが、天というところには、なかなかきびしいしきたりがあるようで、あたしたち親子の訴えなど聞いてもくれませんでした」


「うざってぇな。だから、おれは天界とか好きじゃねえんだ」

 仙人は吐きすてるように言った。のりこもまったく同意見だ。


「母は連れ去られても、あたしたちのことを見捨ててガンダルヴァと夫婦になることを承諾しょうだくしませんでした。

 それに怒ったガンダルヴァは、だれもそのありかを知らぬ自分の秘密の城に母を幽閉してしまったのです」


「なんと」

「うぬぅ」

「ひどい」

 その場にいるみなが、一斉に非難の声をあげる。


「――父は母を取りかえすため、この世界のどこかにあるというガンダルヴァの城を探し回りましたが、果たすことはできず、ついには心労から病気になってしまいました。

 ですから、今度はあたしが病気の父のかわりに母を探す旅に出たというわけです」

 挿絵(By みてみん)

 

 瞳に涙を浮かべて語るカリアに

「くううっ!なんと今どきめずらしい、殊勝な心がけの娘御ではござらぬか!あるじ」

 クワクは涙を流して同情している。

 彼も兄を探して世界を旅した経験があるから、その苦労がよくわかるのだ。



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