のりこと黄金の小箱31
黄金の小箱をぬすんだ豹男と蟹女は、アナンシのゆるしをえて、自分たちの体の一部を返された。
そして、ンディクマが迷惑をかけたおわびだと綾石旅館の宿泊までプレゼントされたのだ。
もちろん、もう二度と王にさからわない、と約束の上でだ。
(当のアナンシは事件のあと、地下アイドルのライブ見物を楽しんでから、大量の土産ものをンディクマに持たせてガーナにもどっていた)
「そうですか。それでユコバックに湯かげんについてはちゃんと報告したんでしょうね?昨日のように、お客さまにゆでガニになりかけられてもこまりますよ」
「あいや、これはしたり!失念しておりました!」
自分のおでこをぺチリとたたくと、蜘蛛の少年はあわてて地下のボイラー室に向かった。
そんなクワクを、あるじと番頭は見送った。
左第二肢をうしなっても、クワクは別にこまったふうもなく以前とかわらない……というより「かわらなすぎた」。
「……クワクってさ、あたしにものすごくわるいことした、って後悔したわけでしょ?なのに、あんなに前のとおり仕事がいいかげんでも、気にしないの?」
あるじの問いに番頭は
「腹立たしいことですが、そうです。肢を一本失ったことによって彼の罪悪感はきれいさっぱり消え去りました。おかげですっかり安心して、以前のだらしなさまで復活しています。
……やはり『肢一本』というのは、あたえるバツとして大きすぎましたかね。しおらしく仕事にはげむぐらいの心のやましさはのこしておくべきでした」
『われわれは人間とちがって単純』というアナンシのことばを、のりこはやっと実感した。
「さらにタチのわるいことに、もどってきたクワクは多少のごまかしを言うことさえおぼえました。アナンシの試練の影響でしょうが、ロクなものではありません。教育のしなおしが必要です」
その目の奥は、つめたく燃えていた。
「まあまあ、もとの感じにもどったのはいいことだよ」
あるじのうなずき顔に番頭は不満顔をうかべたが、そのあと思い出したように
「――ああ、それとあるじ、これをあなたにお返ししておきます」
「なに?」
番頭が袢纏のたもとから取りだしたのは




