のりことあやしい旅館14
「ウィ、そうです。国際警察につとめてます」
「あんて……インターポール?あの銭形警部の!?」
思いがけない機関の登場に少女の気持ちはおどった。
むかしから一人で時間をすごすことが多かったのりこはアニメを観るのが好きで、特に「ルパン三世」がお気に入りだった。そして、その中でもなぜかルパンより銭形警部が好きだった。
父親を知らないせいか、しぶいおじさんにのりこは弱いのだ。
「ゼニガ……?そんな同僚は知りませんが。とにかくワタシは、日本に犯罪の捜査をしにやってきたのデス」
「犯罪の捜査?それって、もしかしてクスリとか銃とか……」
のりこの発言に、
伊達男はさらに目を細めて
「……ウィ、ウィ、ウィ。では、やはりあなたはなにかしらの現場を見たのですね?」
そこまでうながされると、もう自分の心のうちにだけ不安をしまっておくことは、小学四年生にはできない。昨日の夜、旅館で見聞きしたことをきれいにはきだした。
伊達男は
「そうですか……やはり、そんなことがあったのデスネ」
きれいにそったあごをなでると
「こうなってはマドモアゼルに本当のことを言いますが、ワタシたち国際警察は前々から、あの旅館が国際的な犯罪の拠点になっているのではないかと疑っていたのです。それでワタシは秘密の捜査に来たのです……」
「犯罪の拠点……」
強烈な単語に、のりこはガクゼンとした。
「そんな……じゃあ、このことをあるじ……おばさんも知っているんですか?」
あの体の弱そうな春代が犯罪にかかわっているとは、どうにも考えにくかった。
「ア――ッ、それはどうでショウカ?あの女主人はなにも知らないかもしれません。ワタシはあの番頭があやしいと思ってマス。彼が彼女にかくれて取引の元締め(もとじめ)をしているのではないですカネ」
「そんな……ひどい」
(やっぱりあの番頭か。たしかに最初っから印象はわるいものね。いやみな言い方ばっかりしてさ)
「しかし、逮捕しようにもワタシたちには証拠がありません。こういった犯罪はなによりもじっさいの現場、証拠を押さえることが大事デスガ、あの番頭は慎重で、ボロを出しません。しかもワタシのことも警戒してマス」
そういえば、メッヒの伊達男を見る目は最初からけわしかった。自分たちに捜査の手がおよぶことをおそれているのかもしれない。
伊達男……刑事は、少女にニッコとした笑みを向けると
「ソ・コ・デ!せっかくだからマドモアゼルに捜査の協力をおねがいしたいのデース」
「きょうりょく?」




