のりこと黄金の小箱18
のりこがショックを受けているあいだに、豹が、がなる。
「ンディキュマ!貴様という奴は!何度もオデたちをだまちやがっちぇ!
アナンチに取られたオデたちの牙とはちゃみが入れであるど言うきゃら、オデたちは黄金の小箱を盗みだしちゃんだ!
ちょれがなんだ?いざ箱を盗んでみるちょ
『鍵がないから探ちてきょい』とか言いやぎゃって!
オデたちをただ使おうとちゅるから、逆に罠をちかけて言うことを聞がぜようとちたんだ。
ちょれが弟と体をいれかえだうえ、牙・はちゃみも別に隠じでいやがっだちょは!
ちゃては、最初っからオデだぢを騙ちてやがったんだな!?」
と、からっぽの黄金の箱をける。
ンディクマはせせらわらうと
「今ごろわかったか、ケモノどもめ。オレじゃ親父の枕元にしのびいるのはあぶないから、おまえたちを利用させてもらったのさ。おまえらこそ、よくもオレをつかまえたりしやがったな」
そう言って牙とはさみをさらにひしゃげる。
「いちぇちぇちぇちぇっ、やめど、馬鹿!」
「いたい、いたい!」
そんな、のたうちまわるケモノたちを見て
「やめてあげて!ひどいまねは!」
のりこはさけぶが、どうしようもない。
力じまんのアンジェリカも、身軽な蜘蛛に近づくことができない。
いまにも牙が折られようとした、そのとき
「――うん?なんだ、これは?」
ンディクマの足下がぬめりと動き、その姿勢がくずれた。
そのすきに床からのびあがって、蜘蛛が手にする牙とはさみをからめつかんだのは
「あっ、おじさん!?」
そう!それはぬらぬらと自在にすがたを変えるスライム……あの行方不明になっていた花咲史郎にちがいなかった。
旅館の地下から流れ出て見つからないと思っていたら、こんな地下駐車場にひそんでいたのだろうか?
スライムは牙とはさみをのりこに投げつけた。
少女が受け取った瞬間、そのてらてらとした水銀状のものに中年男性の顔がうかんだ気がしたが、それはほんの一瞬で、スライムは形をくずすと、すばやく床のすきまにもどっていく。
「おじさん、待って!花咲のじいさんも心配してるよ!」
父親の名が出たとき、多少反応を見せた気もしたが、けっきょく流れ去る史郎だった。




