のりこと黄金の小箱1
狸の結婚式が無事ひらかれた一週間後、のりこは朝からアンジェリカやユコバックといっしょに、行方不明になった花咲史郎をさがして町をうろついていた。
少女あるじとしては学校に行っても仕事をしていても、あのスライムになってしまった花屋の行方が気になっていたので、今日は従業員を動員して念入りの探索だ。
地下にいなくなったのだから下水に流れているかもしれないと、旅館のそばを流れるかむの川ぞいを重点的に見ている。
せまい川だが、ヨシのしげみなどもあって見えにくいからたいへんだ。
ほんとうはメッヒにも動いてほしかったのだが、番頭は今日もアメリカからいらした陽気な宿泊客・ナンシーおばさんの観光のおともで、朝から旅館をあけている。
おかげで、こちらの探索チームがなんともたよりない編成になってしまった。
「――あれ?ねえ、ユコバックはどこ行ったの?」
あるじの問いに、マンホールのふたを小指一本で持ち上げながら下水をのぞくアンジーがこたえる。
「釜たきさんなら、橋のたもとで見知らぬ女性に声をかけて談笑なさっておられましたわ」
(なにしてんだ、あの火の悪魔は?)
「――いやぁ、いいね、彼女。こんな町ににつかわしくないレディだ」
「あらやだぁ、朝からそんなこと……」
橋のたもとで、どう見ても今から会社に出勤しようとしている若い女性の足を止め、うちの釜たきが語らっている。
たのむから、旅館のしるしが入った袢纏すがたでナンパするのはやめてほしい。
のりこは声を上げた。
「こらっ、ユコバック!さぼってないでちゃんと探しなさい!」
そんな少女あるじに対して、伊達男悪魔は
「あ~っ、こりゃあるじ、どうも。
だってしかたないだろう?こんなに素敵なレディが目の前を通るのに、声をかけないなんてことオレにはできないぜ」
ユコバックは、火をあつかうのがじょうずだが、実はそれ以外、人間の女性に対しても独特の魔力を持っている。
ユコバックがささやく甘えたような口調、それがだいたいの人間の女性には心地よいものらしいのだ。
「あらやだ。素敵なレディだなんて……?」
声をかけられた女性も、どことなく上気した顔をして悪魔をながめている。
今から仕事だろうに、そんな表情をしてよいはずがない。
「そんなバカなこと言ってないで、おじさんを探しなさい!
おねえさんも、こいつはロクでもないやつだからはなれて。シッシッ」
のりこは、まるで年かさのおばさんのように、悪魔から女性を遠ざけた。




