表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あやしの旅館へようこそ!  作者: みどりりゅう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/350

のりことあやしい結婚式8

 たがいにいきり立ち、今にも手が出んばかりの両家の狸たちのあいだに


「……あーぁ、やだねぇ。今日はせっかくの祝い日だってのに、なにつまらないこと言いあってるんだ?」

 ふらふらとわって入ったのは、黒紋付き袴すがたに緑にそめた髪・鼻ピアスというかわったいでたちの若オス狸だった。


「あっ、これはご新郎さま。まだお出になるのが早うございましょう」

「あーぁ、わるいね、番頭さん。あっちにいると退屈で、ついついこっちに来ちまった」


 そう。それは本来、まだ控室にいるはずの新郎・十六代目六右衛門狸だった。

もうすでに酒をきこしめしているのか、その丸顔はほんのり赤い。そのことばといい格好といい、なかなかチャラそうな狸だ。


 そのようすに金長がわ、そして立ち合いの親分狸たちもしぶい顔だ。


 しかし六右衛門は

「そんなに顔をしかめるなよ、ご一同。今日は喜ばしき日のはずだ。なにせ、ふたつの家の記念すべき融和の日なんだから。すこしぐらい飲んでたってわるかないだろう?

 ――それに、こっちだって金長がわの言い分が正しいってことは重々わかっているんだからね」 

「お、親分」


「――しかたねえよ、九右衛門(くえもん)。うちの一家がジリ貧なのはほんとうのところだ。しょせん合戦で負けたほうだからな。そりゃ、対等の合併ってわけにゃあいかないよ。

 オレたちは金長さんのおめぐみで生かしてもらうんだ」

「そ、そんな親分。なさけねえ言い方」

挿絵(By みてみん)

 子分のなげきに、しかし若親分はニッタリ笑みをうかべ

「な~にっ、しかしこの後どうなるかは知れないよ。いっぺん結婚しちまえば、オレはもう金長親分のダンナになるわけだからな。そこでどう立ちまわろうと、かってってもんだ。

 そこいらの三下狸(さんしただぬき)どもにスキなことは言わさせないさ」


「なんだとっ!」

 六右衛門の不敵な言葉に、金長がわの狸がいきりたつ。


 隠神刑部がしかりつけた。

「やめないか、おまえたち!めでたい席だぞ!……それに六右衛門。あんたも花婿のくせして、悪ふざけはいいかげんにしとくがよい」


「あー、これは隠神の親分、失礼をば。オレもなにもみなさんをおこらせる気はなかったんだが、ついね。はい、式はちゃんと坦々とすすめますので……♪たんたんたぬきの金時計……ってね」


 どこまでもふざけた感じの新郎だ。

 おかげで両家ともに、いまから結婚式が行われるとはとても思えない、ぴりぴりとした雰囲気になってしまった。


 メッヒものりこもなにも言うことができず、そのままだまって、となりの新婦の控室に入った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ