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第32話 到着と説明の開始

二人して歩幅を合わせて真っ直ぐ前を向いて試験会場に向けて歩いて行く二人を見ていた周囲の受験生は、二人を変な人達だなとの思いで見ていた。そんなことを思われているなんて二人は知らずに、黙々と試験会場に歩いて行く。


「何か俺達指差されていたけど、何かしたっけ?」


出雲が椿に話しかけると、椿は分からないわと言って試験会場の案内図を持っていた通学鞄から取り出した。


「ここのローターリーを抜けた先を左に歩いて行って、目の前に見える大きなドーム状の建物が試験会場らしいわ」


そう椿が指をさして言うと、地上三階建てのドーム型の白い建物が見えていた。出雲達以外にも続々と建物の中に入っていた。出雲が俺達より早い人が多いんだねと言うと、椿が毎年この募集に百人以上集まるらしいからと返す。


「そ、そんなに来るの!? 美桜からは聞いてなかった……」


椿は出雲の口から出た美桜という名前が気になったのか、出雲に美桜って誰のことなのかと聞いた。


「美桜? 俺がお世話になっている家の人だよ。 使用人の人達や雫さんと一緒に暮らしているんだ」


そう言われて椿は結構な家の女子なのかなと考えていた。それに雫という名前に聞き覚えがあったがうまく思い出すことは出来なかった。出雲と椿はドーム型の建物の正面入り口の扉を開けて中に入ると入り口側に長机が十個あり、そこには男性と女性一組のペアが一組ずつ長机の前にいた。そのペアの一つに出雲と椿が並び、受験票を渡していく。


出雲は椿が出した紙と同じ紙を美桜から渡された紙の束から探して受付の人に渡す。その出雲の紙を見た男性は紙の一番下にある欄にハンコを押してどうぞと紙を出雲に返した。


「ありがとうございました。 では、あちらの看板に従って席についてください」


そう言われた出雲は受付を終えて待っていた椿と共に看板を見た。その看板には自身の持つ紙に書かれている数字が書かれており、数字がランダムに並べられていた。


「私は十番だけど、出雲は何番?」


そう聞かれて出雲が自身の紙を見ると、そこには百五十番と書かれていた。


「ひゃ、百五十番!? と言うことは少なくても百五十人以上は受験する人がいるのか!」


出雲が驚いていると、毎年かなりの数の人が受けるわよと椿が言う。その言葉を聞いた出雲は合格するかなと小さく呟いていた。


「自分は必ず受かると思っていれば、合格できるわよ! さ、席に着きましょう!」


そう言われた出雲は、ドーム型の中心部分に多数に設置されているパイプ椅子に座った。試験会場では机はなく、ただパイプ椅子のみがあった。出雲は椅子に貼られた自身の番号を見つけるとその席に座った。椿も見つけたと言うと、自身の右隣に座る。


「番号バラバラなのに隣だ! 凄い奇跡だね!」


出雲が隣に席に座る椿に言うと、椿がよろしくねと言って前を向いた。椿は緊張しているようで、その椿の緊張感も出雲に感じ取れるほどであった。出雲は椿同様に前を向いて緊張を和らげようとする。そして、出雲と椿が到着してから二十分が経過すると試験の担当責任者と思われる白髪混じりの四十代と思われる痩せ型の男性が前方にある舞台に現れた。


「皆さんがお揃いのようなので、少し早いですが試験の説明を始めようと思います。 まずはこの後期募集にお集まりいただきましてありがとうございます」


男性が説明を始めると、出雲が緊張すると呟き始める。椿は出雲の肩を突いて落ち着きなさいと言う。出雲はごめんと言って舞台の男性を再度見る。


「毎年この募集は過酷な試験であり、合格人数も少ないです。 しかし、このしけに合格した生徒達は、後の未来で活躍している人達ばかりです」


その言葉を聞いてこの場にいる受験生が全員湧いた。出雲と椿も活躍している人が多いんだと驚いていた。


「その実例として今回お一人お呼びしています。 どうぞ!」


そう白髪の男性に呼ばれた人は、この場にいる出雲以外が驚く人物であった。その男性はこの国に仕える国立魔法部隊の隊長であった。


「ご紹介に預かりました。 国立魔法部隊隊長である来栖朧です。 私も学生時代この後期試験を受験し、その過酷な試験を乗り越えて入学しました」


来栖朧の言葉をこの場にいる全員が真剣に聞いていた。誰一人瞬きすら惜しいほどに聞いている。出雲はその来栖朧という人物が誰か分からないので、どんな人なのだろうと考えていた。

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