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第153話 やっと会えた

愛奈はその後も終業時間まで働くと、帰宅することになった。店を後にすると時刻は既に二十時を回っており、愛奈はコンビニエンスストアのATMでお金を引き出していた。


「これぐらいあれば、あの両親から逃げられるかな……」


愛奈はそう呟くと、封筒に入れた五百万円を鞄に入れて家に帰らずに真反対の道を歩き始めた。


「スマートフォンが何度もなってるし、メールの通知もたくさん来てる……出たくない、絶対に出ない!」


愛奈はスマートフォンの電源を切ると、家から遠ざかるために繁華街を通過していく。その際に何度も若い男性から声をかけられるも、愛奈は無視をし続ける。


「大丈夫です。 知りません」


何度もそう言いつつ若い男性たちを無視をしていると、不意に愛奈は右肩を強く捕まれた。


「痛い! な、なんですか!?」


愛奈が後ろを振り向くと、そこには金髪や茶髪に髪色を染めている若い集団がいた。その男たちのは愛奈をニヤニヤとしながら見ていた。


「今一人? こっちに来て遊ぼうよ!」


金髪の若い男性が愛奈の右腕を掴んで遊ぼうよと何度も言い続けている。


「困ります! やめてください!」


愛奈が腕を振り払って走り去ろうとすると、茶髪の若い男性が愛奈の右腕を掴んで逃げるなよと低い声で言った。愛奈は恐怖に覚えている表情をしていると、金髪の若い男がその顔可愛いねとにやけている。


「離して! やめて!」


愛奈が叫んで腕を剥がそうとすると、金髪の若い男を誰かが殴った。その男に愛奈は見覚えがあった。


「妹から離れろ!」


そう言いながら茶髪の若い男も殴りつけた男は、愛奈の義理の兄である出雲であった。出雲は二人を殴ると愛奈の右手を掴んで走り出した。


「お、お兄ちゃん!? 何で……生きてたの!?」


愛奈が驚いているも。出雲はその言葉に後で答えると言って繁華街から横道に入っていく。


「もう大丈夫かな? やっと会えたね」


自身にそう話しかけてくる出雲の姿を見た愛奈は、十年前から姿が変わっていない出雲に驚いていた。


「十年前に姿を消した時と同じ姿だわ……何があったの?」


愛奈がそう出雲に言うと、出雲は父親に捨てられて家から消えたことを言う。それを聞いた愛奈は、やっぱり最低な人達だと両親のことを言う。


「愛奈はその最低な親から逃げたいんでしょ?」


逃げたいんでしょと言われた愛奈は一度俯くと、顔を上げて出雲の目を真っ直ぐに見た。


「もう使われるだけの人生は嫌! あんな地獄から抜け出したい!」


そう愛奈が出雲に言うと、出雲は俺はお兄ちゃんだからなと愛奈に言った。出雲は愛奈の頭を優しく撫でると、俺はお前と向き合っていくよと言った。


「向き合う?」


出雲の言葉が理解できなかった愛奈は、向き合うってどういう意味と聞いた。


「俺は愛奈と初めて会った時に羨ましいと思ったんだ。 両親に必要とされていて、生きる価値があると思ってた」


その言葉を聞いた愛奈は、あの時そんなことを考えていたんだと出雲の気持ちを少し理解出来た気がした。


「違う世界に行って俺は自分にも価値があることを知ったし、大切な人と出会えたんだ」


出雲の話を聞いていた愛奈は、暖かい人達と出会ったんだねと愛奈が出雲を見る目は優しかった。その話をしている最中、二人の若い男が出雲達がいる道に入ってきた。


「さっきはよくも殴ってくれたな! お前殺すぞ!」


金属バットや小型のナイフを持つ二人の若い男は、出雲と愛奈に対して脅してくる。しかし出雲はその二人を見ても何も恐怖を感じていなかった。


「そんな脅しで怖がるわけないだろう。 本当の死が目の前にあったことあるか?」


出雲は二人にそう言いながら、愛奈を自身の後ろに移動させた。


「わけわからないこと言ってんじゃねえよ! その女を置いて死にやがれ!」


そう金髪の男がバットを振りかぶって出雲に殴りかかると、出雲はライトシールドを発動させて攻撃を防いだ。

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