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第118話 瓦礫

しかし来栖や出雲達はその議論が起きていることは知らないまま、救急車によって運ばれていく。出雲は内臓損傷や身体に裂傷などがあり、重症であった。逆に美桜は魔力の枯渇により衰弱で済んでいたのはラッキーであったといえる。


あれだけの巨大な力を扱ったにも関わらず、衰弱で済んだのは不幸中の幸いであったのかもしれない。雫は美桜の救急車に、蓮達動ける仲間は出雲の救急車に乗って病院に向かった。


出雲は救急車に乗せられている間に、幾度か血を吐いていた。救急隊が輸血などをして出雲を死なせないように懸命に治療に当たっていた。その際に蓮や眼が覚めている琴音が何度も出雲の名前を呼び続けていた。


「出雲! 死ぬな!」


蓮が出雲の側で何度も名前を呼ぶ。


「出雲君生きて! 出雲君が死んじゃったら美桜が苦しむよ!」


琴音も蓮と同じく出雲に何度も話しかけていた。しかし出雲は何度話しかけても一向に意識が戻らなかった。出雲はその後も血を吐き続けたり、痙攣を始めていた。


「これはいけない! まだ到着しないのか!」


救急隊の一人が運転手に叫ぶと、渋滞が起きていてと返事が来た。蓮は何でこんな場所でと外を見ると、そこには戦闘で破壊されたと思われる瓦礫が落ちていた。


「戦闘での瓦礫か! くそ!」


蓮が救急車から飛び出ると、遠くに見える大きなビルの瓦礫をどかそうとする。しかし、負傷している身体ではどうにもならないので、周囲にいる人達に瓦礫の撤去を手伝ってくださいと叫ぶ。蓮は周囲で止まっている人達に話しかけて、協力してくれるように頼む。しかし、話しかけた人達は無理だと言って協力をしようとはしない。


「お願いします! 友達が危険なんです! あの救急車に乗ってるんです!」


蓮が尚も言うと、周囲にいる一人の大人が空を飛んで行けばいいだろと言った。しかし、戦闘によるビルの崩壊や、周囲に散らばる瓦礫のせいで空を飛ぶ許可が下りていなかった。


「許可が出ていないんです! この瓦礫をどけて早く病院に行かないと!」


そう蓮が叫ぶと、一人の初老の男性がお前の都合だろうがと蓮に詰め寄った。その様子を見ていて看過できないと思った救急隊の一人の男性が下りてきて蓮と初老の男性の間に入ってきた。


「そこまでにしてください! 私達だけでどかしますから!」


そう言った救急隊の男性は、手から風の魔法を発動させて道路を塞いでいる瓦礫を壊していく。その瓦礫は巨大なもので、転がって塞がったと思われる。道路は壊れていないので、瓦礫を壊してどかせば通れるようになる。


蓮はその救急隊の男性と共に魔法を発動させて壊すも、蓮の魔力は底をつきかけており体力も限界に近かったので、全く力を発揮できていなかった。救急隊の男性が蓮にもう休んでくれと言うが、蓮は俺より出雲の方が心配だからと言い、力を振り絞って瓦礫を壊していく。蓮と救急隊の男性が協力をして辛くも瓦礫を撤去することが出来ると、その後ろにもう一つ巨大なコンクリートの塊があった。


蓮と救急隊の男性はその場で落胆をすると、その二人の姿を見ていた周囲の人達が、徐々に協力をしてくれるようになった。蓮に文句を言っていた初老の男性も、負けたよと言って協力を申し出ていた。


「ありがとうございます! 一緒に撤去をしましょう!」


蓮が協力をしてくれているその場にいる全員の人に感謝の言葉を述べると、声を合わせてコンクリートの塊を魔法で壊していく。全員で位置を合わせて魔法をぶつける。するとそのコンクリートの塊は巨大な音を立てて爆発四散をした。


その場にいる全員は壊せたことに喜び、蓮と救急隊の男性も手を握ってありがとうと言いあっていた。蓮は最初に文句を言ってきた男性に再度ありがとうございますと個人的に言っていた。


「ありがとうございます。 おかげで助かりました」


そう言われた初老の男性は、気が変わったからだと蓮に話していた。蓮はそう言われると、それでもありがたかったですと返答した。


「さ、これで道は開けただろ? とっとと行きな」


そう言われた蓮は、救急隊の男性と共に救急車に戻っていく。そして、蓮達は救急車を発進させた。

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