初めてのおつかい
時間ある内に更新稼ぎをします(`・ω・´) 応援ありがとー!!
あ、コメディ(半分)です。
ちょっとキャラ崩壊をしている節はありますが、ちゃんと理由はあります!!(次話冒頭にて)
『みんな、今日の準備はいいかい?』
『はい。皆様も、抜かりのないように。』
『了解。準備万全だ。』
『じゃ、今日も始めようか。』
『師匠のために。彼の想う世界のために。』
『師匠のために。彼の想う世界のために。』
私、帝塔伯爵こと、ヴラド・ヴィン・インへリアルは義憤を覚える。我が家族の自分に対する、不当に過ぎる扱いに。
単独行動をさせてもらえないのだ。
時計塔の出入り自体は自由である。誰の許可も要らず、自由に散策する権利が私にはある。というよりも、初代皇帝曰く『制限した所で意味が無い。国落としだけは止めてくれ何でもするから!』との仰せだったから、勝手にする権利があると断言してもよいぐらいだ。
それだというのに、私の弟子たちときたら!最近、いささか過保護になっているのではないか?私は良識あるジェントルマンだというのに、全く。
『師匠を放し飼いにすると帝国が傾く』と口を揃え、挙句の果てに監視まで付けてくるのではないか!幸い、彼らはまだまだ未熟なために、今はまだ何とか監視網を細心の注意で潜り抜けている。
はッ、私を監視しょうとするなど百年早いわ小童ども!ふふん、今日も同じように抜け出してやるわい。そーれ、こことここを...ゲッ、トラップ!?な~んてね。かかるわけが...あっ、そっちが本命か!あっぶない!!
よしよし、今日も無事抜け出せたぞ!よォッッッッし!!!
......................................。へ?なんで喜んでいるのだ、私?何故、こんな事に達成感を感じてしまっているのだ?
あれ?ガチート転生者が細心の注意を払わないと突破できない監視網って、一体何なんだろうネ?あいつらまだ平均年齢十歳だぞ?
わあ、すごーい、教育した私も鼻が高ーい、あははは!………ってなるかアアアアアアアァアアアアアアアアアアアアアアアア!!
や ば く な い か ! ? (戦慄)
いや、まあ、ほら。力技とかチート魔術を使ったら一瞬ですけどね。だけど、使ったら人として負けとか、師匠としてどうなんだとか、年齢ウン千年の大人として情けないとか、良心の呵責に悩まされる訳であって...。
うん?そもそもの話、子供に外出を禁じられている大人って情けない云々以前の話なんじゃあ.......!??
う わ あ あ あ あ あ あ あ ん (ガチ漢泣き)
クソ烏が腐りきったゴミを漁るネズミを見る眼でこちらを見ているが、そんなことはどうでもいい。ここは年長者として、ビシッと話をつけねば。えーと、よし、集合の呪文を発動させて、と。
教室に集まってきた可愛い弟子たちを見渡す。思わず顔が緩みそうになるが、いかんいかんと自制する。今日は心を鬼にせねば。
「うん、一人で外出をー」
その瞬間、空気は凍り付いた。
「「「「「「「「「ダメです。」」」」」」」」」
「...................どうしてもかい?」
「「「「「「「「「散策。ダメ。絶対。」」」」」」」」」
あれれ?なんで危険薬物みたいに行動を制限されているのだ?チームワークが凄すぎて、師匠はもう涙が出そうです。
アダムは目頭を押さえると、苦虫を一万匹噛み潰した顔でこちらを見た。リリスに至ってはもう眼のハイライトが消え失せ、不気味な笑いを繰り返している。
ミカエルは金貨にブツブツ何か話しかけたと思いきや、決死の戦いに向かう猛者の顔で振り向く。身体全体にジャラジャラとお守りをつけているが、重くないだろうか?眼に金色が乱反射して眩しいのだが。
ラファエルは完全な天使の笑みである。もうこの世に悔いは無いと言わんばかりの微笑みだ。眼は遥か遠いユートピアを見つめている。何故か癒されなかった。
ガブリエルは先天性障害を持つ犬のように、ありもしない尻尾をグルグルと円状に追いかけている。かなりスピードが速いが、眼は回らないのだろうか?
ウリエルは『遺書』とタイトルがつけられた書物に、渾身の一筆を送る力強さで何かを殴り書いている。触れちゃいけないオーラが見えるのだが?ついでに、カマエルへ作戦書らしきモノをスッと背中越しに渡す所も見てしまった。
アリエルは新作の生け花に顔を突っ込んで、『オラに元気を~』と訳の分からない事をほざいている。まあ、幸せそうだから良しとするか。癒される。
アズライールは、うわッ。隅っこの方にいた。視線を向けると、『私はここにはいません』とでも言うように丸まった。可愛い。てか、包丁で何かをめった刺しにしてたわ。怖い。
カマエルは………なんかメイド達を買収しょうとしてた。なになに...?え、私の食事にヒュドラの濃縮毒を睡眠誘発剤代わりに入れて欲しい?...何故私の解毒性能を理解しているんだ、こやつは。
うーむ。これは………。はッ、まさかッ、思春期特有のあの恐ろしき病気か!?
できるだけ優しく笑顔を作り、うんうんと理解の頷きをみんなへ送る。
ヒエッ、とみんなの顔色が青を通り越して蒼白となった。解せぬ。
取り敢えず落ち着かせよう。そう、怪我した野生動物に近づくみたいに...。
「大丈夫、大丈夫。ちゃんと分かっているから。」
「「「「「「「「「分かってない時の顔だッッ!!」」」」」」」」」
失礼な。私が一体何をしたというのだ。前回お出かけした時も、地下酒場で悪いお兄さんたちとOHANASHIしただけじゃないか。
「兎にも角にも、師匠が一人でお出かけとかダメです!」
アダムが震える脚に喝を入れるかのように、九人を代表して前へ出た。本当に大丈夫だろうか?
「疲れが溜まってないか?」
「………………。」
アダムの額に青筋が数本立ち、ブチッとナニかが破裂する音を聞いた。
はあ、と大きくため息を吐く。こうなれば、最終手段だ。交渉の最終奥義、『妥協&脅迫』のお出ましだ。
「何をすれば一人で行かせてもらえる?(行かせなかったらどうなるんだろうネ?)」
賢いアダムなら、私の言わんとすることにすぐ気づけるのだろう。現に、彼はブルブルと武者震いをしているじゃあないか!
「………クッ、パン屋で買い物をして、真っ直ぐ帰ってきてください。そうすれば外出を許可しましょう。」
なーんだ。簡単な事じゃないか。さっさと終わらせて直ぐに帰ってきてやるさ。
「了解。イイ子にして待っているんだよ~。」
封印を解かれた魔獣を、無力に見送るような眼をしたみんな。そんな可愛い子供たちに手を振り、私は朝日へと駆け出した。
パン屋に着いた私は、十人分のパンを買うことにした。大貴族どころか、皇帝でさえへりくだる身分を持つ私だが、こういった町場のものが大好物だ。なんだろう、こう、温かみがあるといえば良いのかな?
だが、普段のままだと貴族と勘違いされるため、予め変身魔法を使用している。度肝を抜かれても困るからな。こういう所は抜かりないと自負している。
さて、新作のパンを選び終えた所で会計とするか………なんだ、この臭いは?目線を向けると、丁度小麦粉らしき袋を載せた台車が道路を横切る姿を見た。
はて。世にも奇妙な事があるものだ。ああ、おかしくって笑いが出てしまいそうだ。
パン袋を店頭に置き、店主の戸惑う声を置き去りにしながら私は走る。裏路地に入り、ヒトの気配を確認する。都合のいいことに、誰もいないようだ。私は黒烏に姿を変えると、台車の方角へ羽ばたいた。
袋を数個載せただけの小さい台車は、ある地下路地で止まった。運び人の男はフーッと安堵のため息を小さく吐き出し、いそいそと現場を離れ………ようとした。
高級な革袋に包まれた手が、ポフッと男の肩に置かれたのだ。かく言う男も只者ではない。鍛え抜かれた手足と、袖に隠した暗器。間違いなく夜の住民だが、そんな彼も肩に手が置かれるまで、全くその存在を感知できなかったのだ。
「だ、誰だ?」
男の上ずった声と険しい形相に対し、豪奢な黒の軍服に身を包んだ美しい男性は甘美に微笑む。
「いや、なに、通りすがりのボンボンさ。丁度品質のいい小麦粉を欲していたところなんだ。その袋なんだけどね、いくらで売りさばいてくれるのかい?」
男の肩より力がフッと抜ける。相手は明らかな貴族、それも大貴族の様相をしている。そんな高貴な貴族様が小麦粉如きを買うために、わざわざ足を運ぶハズがない。そうと分かれば、答えは簡単だ。
「先ほどは見苦しい姿をお見せしてしまいました。この小麦粉ですが、ご存じの通り最近は制限が厳しく。こうも品質が良いものですと、風車遊びが好きなネズミが食ってしまいますので、どうかご理解のほどを...。」
男の脳裏に、『前提として貴族が自ら足を運ぶ訳が無い』という常識は、既に塗りつぶされている。あるのは、『ただ貴族に答えねば』という義務感のみである。
「そうか。それは残念だ。因みに、この小麦粉の美味しさを十分に理解して運んでいるのかね?」
男とて、伊達に夜の世界で生き抜いてきた訳ではない。人が壊れていく所も、家族が悲嘆にくれる所も、数えきれないぐらいに見た。仕事だと割り切り、長年そうして『勝者』で在り続けたのだ。
「ええ、それは勿論でございます。」
その言葉で、男の運命は定まった。男性はニッコリと笑みを浮かべると、パチンと指を鳴らした。男はパチパチと眼を数回まばたき、夢から突如覚めたような胡乱気な顔つきで貴族を見た。
「さて、貴方の袋に入っているものは何ですか?」
「な、なにを」
『答えなさい』
重圧が男にのしかかり、彼は心臓を鷲掴みされるような恐怖に苦しみ藻掻いた。
「だ、ダストォ。さ、さ、最高純度の、ダスト、です。」
貴族の男性は、『よくできました』とでも言うように男の頭を柔らかく一撫でした。しかし、男には分かった。それが地獄の始まりであったことを。
「そうですねェ...。この最高純度の『ダスト』の粒一つで、ヒトはどうなりますか?」
「酩酊、感、を得る。」
「はい。では二粒ならば?」
「よがり、快感、に、溺れ、る。」
「よろしい、三粒なら?」
「最、高に、狂、う。」
「ほう。なら四粒は?」
「完全、に、依存、す、る。」
「なんと。五粒なら?」
「支配、され、る。」
貴族の男性は満足気に頷く。その優美な顔に依然として穏やかな笑みが咲き、その姿は覚えの悪い生徒を諭す先生そのもの。男性はその表情のまま、無邪気に、残酷に、冷酷に宣告する。
「じゃ、実践してみましょうか!嬉しいことに、一袋分試せますね!」
「い、いや、く、狂う...................!!」
男性はふんわりと笑った。幼子に話しかけるように、優しく、穏やかに、終わりを告げる。
「大丈夫です。頭に触れた際、正気を失えないようにしておきましたから!」
その日、地下路地は人ならざる悲鳴で満ちた。おかしな事に、誰一人異変に気付いた人はなく、ドス黒い血痕のみが石畳に染み付いていたと言う。
男性は嗤う。どこか泣きそうな眼で、懸命に、愉快に、痛快に嗤い続ける。
「次は、風車遊びと洒落込みますか!」
「師匠?」
「はい?」
「なんで郊外の風車が数個、爆発したのですか?」
「ほら、美的センスに目覚めたんじゃないかな?」
「訳の分からない事をほざきやがらないで頂きたいものですね。」
「ええと、そうだ、詩的に退職したかったんじゃない?」
「誰が家計火の車ですか、この駄師。上手い事を言えと命じた気はございませんが。」
「あれ、これ、私が下?私の序列、どうなっているの?てか、駄師って何!?出汁みたいに言わないでくれる!?」
「「「「「「「「「ァアアアアアアアアアアアアン!!!?」」」」」」」」」
「ひ、申し訳ございませんでしたァ!!!!」
『平均年齢十歳の子供たちにリンチされる男性』という訳の分からない映像が、時計塔内で見られたと云う。
『カァアア~(パンうめーなァ、オイ)』
ある烏が男性の憐れな姿を肴にパンを貪り食う姿を、メイド達は見たらしい。
『ねえ、私たち、ちゃんと演じられたのかな?』
『うん、きっと。大丈夫さ、上手く演じられたよ。』
『全ては師のために。』
『全ては師の愛する世界のために。』
『明日も、頑張っていこう。』
是非とも感想をば。誰も弟子がおつかいするとは言ってない。(詐欺)
繰り返します、ちょっとキャラ崩壊をしている節はありますが、ちゃんと理由はあります!!(次話冒頭にて)