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2-4.

 そのとき。


 右手から空を裂いて一筋の光が矢のように飛んできて、私たちの頭上高くで四つに分かれた。

 瞬きする間もなく、四つの矢は違わず魔法獣に突き刺さり、獣たちは一度大きくブレて、脚元から粒子のようになって消える。

 残されたアリスは、なにが起こったのか理解できないように大きく目をみはったまま獣たちのいた場所を見つめていたが、ハッと顔をあげて私の姿を捉えた。

 泣きだしそうに顔を歪めて、こちらへ走ってこようとする。


「カミリアさま──」

「アリス!無事か!?」


 光の矢が飛んできた方向から大きな声がアリスを呼んだ。

 見ると、中庭を慌ただしく走ってくる三つの人影。

 先頭を切っているのは賑やかにはねた赤毛の男だ。後ろにはまばゆい金の髪の男と、さらにその背後に銀色の髪を首元でひとつに束ねた細身の男。

 よく見知った三人が一様に焦った表情で、こちらへやってくる。

 真っ先にアリスの元に到達した赤毛の男は、がっと力強くその両肩に手をやった。


「アリス、大丈夫だったか!?」

「あ……ギルベルト様……?」


 ギルベルトに次いでアーサライルとクラウスも到着する。

 金の髪の恐ろしく整った顔の男──アーサライル王子殿下は、到着するやアリスの肩を掴むギルベルトの手を払いのけて、そのままそっと彼女の頭に手をやる。


「怪我はないか?」

「は、はい……。あの、今のはアーサライル殿下が?」

「アーサーでいいと言っているだろ。……よし、怪我はなさそうだ。まあ、私がお前を傷つけるはずがないな。あの女に──」


 そこで言葉を切って、アーサライルはまだ地面に座り込んだままの私を見た。

 他の二人もこちらを見ている。

 アーサライルの深い海のような碧色の瞳が細められ、鋭く私を睨みつけた。


「あの女に他になにもされなかったか?」


 三人に庇われるようにして、私からは姿が見えなくなってしまったアリスが焦ったように声をあげる。


「アーサー様、カミリア様は私のことを……っ」

「わかってるぜ、アリス。なにも言わなくていいんだ」


 そう言ってギルベルトが再びアリスに触れたのか、アーサライルの代わりにクラウスの腕が動いてぱしりと叩き落とした音がした。

 アーサライルは私を見据えたままでいる。


「ここは懐深い我が王国の誇る学びの場だ。誤ちを起こした者を拒みはしない」


 王太子らしい堂々とした振る舞いで、アーサライルは「だが……」と続ける。


「二度目はないぞ。ウェステリアの娘」


(……わかってるなら、女、なんて呼ばないでいただきたいわ)


 私は無言で立ち上がり、図書館棟の入口に向かってゆっくりと歩き出した。

 くじいた足を悟られたくなくて、一歩進むごとに痛みがはしるのを我慢して、なるべく普通に見えるように。


「カミリア様!」


 アリスちゃんが名前を呼んでくれる。

 無事でいてくれて本当によかったな、と思った。


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