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1-4.

「アリス嬢は意外と考えてる子なんだねえ」


 ノウスが言う。


「ちょっと、意外となんて失礼なことおっしゃらないで頂戴。私が見初めた子ですわよ」

「…………いいけど。君、クラウス様との婚約を“いまのところ”だなんて、他所で言ったらだめからね?」

「わかっていますわ」


 クラウスの顔を頭から追い出して、アーサライルたちのことを話すアリスの笑顔を思い返す。

 元のゲームではあえて没個性に描かれていたけれど、実際のアリスちゃんは強い子だった。

 恐ろしい魔法におびやかされても、私や攻略対象たちに疑念を抱いても、諦めずに自分自身で正しい答えを見つけようと行動する勇気を持っていると思う。

 花の咲くような笑顔や、くるくると変わる表情に惹かれた先で、そんな彼女の性格を知れたことが嬉しいとと思った。


 思わず一人でにこにこしてしまい、我にかえった私は口元を引き締めて、それより、とノウスを振り返った。

 いつのまにか紅茶のおかわりを飲んでいたので、私もテーブルに置いていたティーカップに口をつけた。

 冷めてしまっている。

 カップの上を親指で撫でるようにすべらして「炎よ」と呟いて温める魔法をかけると、ふたたび紅茶から湯気が立ちのぼる。


「私ものんびりしてられません。攻撃魔法が使えないことがバレてしまわないよう、なんとか他の魔法でごまかせるようにしなければ」

「そうだ。それなんだけどさ、カミリア」

「なんですか?」


 ノウスが少し真剣な顔で私を見た。

 眉をしかめて、声をひそめる。


「君、ベアトリーチェ嬢に君の魔法の欠点を教えたりしたかい?」


 なにを言うのだ。

 こんな不名誉なはなし、私含めて一族全員墓まで持っていかせるつもりなのに。


「そんなわけないでしょう」

「そうだよねえ。でも、さっき彼女はそれを知っている風なことを言っていたね」

「え……」


 アリスが来る前の会話を思い出す。


『そもそもカミリアが魔法の指導だなんて、不向きもよいところですわ!』


(あ──?)


「で、でも、私に“指導”が向かないって意味にもとれますわよね?」

「そうだね。僕らが神経質になってるだけで、そんなに深い理由はなかったのかもしれない」


 そう言いながらもノウスは、顎に手をあてて考え込むような仕草をしている。

 私はなんとなく胸がざわつくような感じをおぼえて、振り払うように立ち上がった。


「そう、考えすぎですわ。それよりも今は対策です!お兄様、私ひとつ考えた魔法がありますの、付き合ってくださる?」

「ええ〜、僕が付き合うのかい?それこそクラウス様に見てもらった方が──」

「バカおっしゃらないで!」


 再び脳裏に呼び起こされたクラウスの人をくった笑みを蹴飛ばして、私はこぶしを握りしめた。


「あの方は敵ではないかもしれませんけど、ライバルですのよ」

「そうかい……」


 呆れたようなノウスを無理やり立たせて、私は新たな魔法の相談を始めたのだった。


 ──そうして、一週間は過ぎる。

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