表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海と灯台と君と  作者: シマエナガ
2/3

懐かしく悲しい思い出

次の春から、晴れて中学生になろうとしていた頃、灯台に向かう途中にあるこの長い階段の数を数えた。その時は、麗奈は自分とほぼ同じぐらいの身長だった。それともう1人、和彦という幼なじみ。

和彦は、近所ということもあって良く一緒に遊んでは、遅くまで灯台にいてよく親に怒られた。


「やっぱ長いね〜この階段。まだ覚えてるでしょ?優人君。この階段の段数」


少し息を切らしながら、彼女は問いかけてきた。

50段程まで駆け上がって来たのに、あまり疲れが見えない。陸上部の英雄と呼ばれているだけある。

バスケ部を小学生からやってきて、今も厳しいトレーニングをして体力を付けているのに、敵わない。

両足に1.5リットルのペットボトルが付いてるみたいに重い。呼吸を整えながら、残りの段数を見上げて答えた。


「すげー覚えてるよ。228段」


彼女がクスッと笑った


「それ聞くと、いつも思い出して笑っちゃうんだよね。228段。『フツーや』って読めるんだよね」


僕も思わずクスッと笑った。


「それそれ。『普通ではねぇ!』とか、『しょーもな!』とか、言ってたな」


「ほんと、思い出す度に笑っちゃうよ。学校のみんなに言ってもあんま分かってくれなかったよね」


「ほとんどうちらしか笑ってなかったよな。周りは何が面白いの?って感じで見てたけど」


「この階段にまつわるエピソードを、みんな知らないからだよ」


実は、こんなにも笑えるのには訳があった。

小学生の頃、僕がこの階段の頂上から転げ落ちたこと、それを助けようと走ってきた和彦も下まで転げ落ちたのに、何故か二人とも無傷だったこと。

中学生の頃、誰が一気に頂上まで駆け上がれるか勝負して、ほぼ互角だった僕と和彦が同着し、頂上で二人とも酸欠になったこと。顔面蒼白でぐったりしてる僕らを、大笑いしていた麗奈が野良猫の糞を踏み、買って間もないお気に入りのスニーカーが汚れショックで大泣きしたこと。


「でも、思い出したくないのもあるから、なんか矛盾する」


彼女の声のトーンが下がると、僕も思い出してきてしまった。

和彦を失った去年の夏のことを。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ