ソラとミツル 作戦会議
ソラ「どうするの?」
ミツル「んー、どうしようか」
ソラ「今日のうちにしておきたいことは、ある?」
ミツル「んー、さっそく奇襲でもかけてみる?」
ソラ「それは、まだ駄目」
ミツル「えーなんで?」
ソラ「情報が少ない。それにきっとほかの人たちも奇襲を狙うなら今だと思っているはず。できるなら情報収集を優先したい」
ミツル「そんなものなくたって僕は強いよ?僕たち三体のドールの中で、戦闘能力が一番高いのは僕だし」
ソラ「なるべく負担は軽減したい。それに勝率は高ければ高いほどいい」
ミツル「負担って…別に僕たちはドールだから疲れとか痛みとかないよ?」
ソラ「でも壊れられると困る」
ミツル「…僕は、強いよ」
ソラ「強くても弱くても年上が年下を守るのが正しいこと。そのためにも言うことを聞いて」
ミツル「年上とか年下とか、そもそも僕たちに年齢なんてないんだよ」
ソラ「でも、ミツルは私のこと『お姉さん』って呼んだ」
ミツル「でもそれは、ほら、軟派な人たちだって女性のことをそう呼ぶじゃん」
ソラ「じゃあ、ミツルは私をナンパしたの?」
ミツル「してないよ!」
ソラ「じゃあやっぱりいうこと聞いて」
ミツル「…そんなに僕だけじゃ頼りない?」
ソラ「うん、頼りない」
ミツル「え」
ソラ「ミツル一人で全部で四人殺すなんて、リスクが高い。それに悪い人たちなんでしょ?どんなことしてくるかわからないもの」
ミツル「……」
ソラ「なるべく戦闘は避けて、共同戦を一時的にでも組めれば…」
ミツル「…あーぁ、もういいや。いい子ぶってるのも疲れたし」
ソラ「ミツル?」
ミツル「せっかく扱いやすそうな子がパートナーでラッキーなんて思ってたのに、『正しいこと』なんてものにこだわっちゃってバッカみたい」
ソラ「でも正しいことをするのが良いこと。それでミツルの願いも叶う。なにかおかしいことだった?」
ミツル「あっはは!うんそう、確かにそうだよ。僕の願いも叶う。でも結局ソラだって自分の欲望のために人を殺すんだよ?なに自分だけいい子ぶっちゃってるの?」
ソラ「私の、欲望のため…」
ミツル「ねぇ、そういうの偽善者っていうの、知ってる?僕さぁ、そういう奴大っ嫌いなんだよね」
ソラ「でも私と一緒に戦おうとしてくれた。それは一人じゃ勝てないと思ったからじゃないの?」
ミツル「はぁ?何言ってんの?僕はドールだ。痛みも恐怖も死ぬこともない、史上最強の軍人であり兵器だ!ほかのドールにも、ましてやヒトなんかにも負けるはずないでしょ!」
ソラ「ミツルは、本当にヒトになりたいんだね」
ミツル「何言って…」
ソラ「自分にそう言い聞かせて奮い立たせてる。違う?」
ミツル「そんな、わけ…」
ソラ「怖くていいんだよ」
ミツル「なっ…」
ソラ「それに今はミツルは国のものじゃなくて、私のパートナー。軍人でも兵器でもない」
ミツル「…っふ、ふふ、あっははは!ねぇソレ優しさのつもり?僕から価値を奪うのが救いになるとでも思った?キミってほんっとう自己中心的で偽善的で、吐き気がする」
ソラ「誰かの価値は奪えるものでも、与えられるものでもないよ」
ミツル「与えられなきゃどうするわけ?自分で作るとでも?」
ソラ「うん、そうだよ」
ミツル「…自分は生まれた時から価値が付属されてたからって、ドールまで一緒だと思わないでよね」
ソラ「一緒だよ。ヒトもドールも勝手に生まれさせられて、勝手に生きることを義務付けられる。たとえそこに価値も意味もなくても」
ミツル「でもヒトは死ねる!終わりがある!でも、僕らはどんなに自分を傷つけてもレイ君に直されて、戻される!終わりを迎えることもできない!強さだけが、僕の存在価値だ。そう教え込まれて、それしか与えられていない。勝手に僕を、欠落品にしないで」
ソラ「欠落品なんかじゃない。ミツルは、ドールでもない。体の構造が違うだけの、立派なヒト。…私なんかより、ずっと」
ミツル「…なにそれ」
ソラ「ミツルの気持ちはヒトが持つ、承認欲求。自分を認めてほしいと思う、ごく普通のあたりまえの我欲」
ミツル「僕が、ヒト?こんな体で、こんなに空っぽなのに?我欲?ただのプログラムが?」
ソラ「本当にただのプログラム…?」
ミツル「どういう意味?」
ソラ「あなたの、ミツルの『元』になったヒトはいない?」
ミツル「僕の、『元』?それがいたとしたら何?」
ソラ「」