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第7話 「彷徨う悪魔」

あっさりクレトが負けてしまった所からです。少し毒抜きに時間がかかってしまいましたが、琉生の賢明な治療のおかげで彼は目を覚まします。


琉生は魔法が使えなかった分、あらゆる分野の知識を習得しているようです。以前の高校時代のテストもやればできる子...そんな感じだったようですね。

--ここは。


「やっと起きたのか、クレトさんよ」


クレトが黒の魔術師に襲われた洞窟で目を覚ますと、琉生は鍋でグツグツと鍋を煮込んでいた。


「...お前が助けてくれたのか」


「まぁな、感謝しろよ。俺が回復魔術ちっとも知らなかったらお前は今頃...やっぱ言うのやめた」


再び沈黙が辺りを包み込むと、琉生は彼にポタージュスープを振る舞った。クレトは渋々彼から振舞われたものを飲んだが、想像以上に美味しかったようで、すぐに飲み干した。


「とりあえずだな、この洞窟を抜けてなるべく魔力消費を抑えてみんなと合流しよう」


「待て、俺はもう大丈夫だ。戦える」


「その身体で何言ってんだ。俺はお前を救出するのが目的で、別にあの黒服の奴らを討伐する手助けに来たわけじゃないぞ」


琉生は多少呆れ込んだ様子で身支度を整えていた。クレトは腹の包帯を勢いよく外そうとすると、思いのほか傷口が深かったせいか血がどっと滲み、動くことさえままならなかった。


「ほらな。4、5時間でここまで意識が復活したのが奇跡的なもんだ。とっとと帰るぞ」


「...」


クレトは無力でありながら勝手に敵に向かっていったことを少し後悔していた。自分に勝機は無かったし、何より無謀な戦いに首を突っ込んでいた。だが、彼の身体を突き動かしたのは彼自身の持つ過去によるものだった。


「結局弱いまま...何も変われないまま年月だけ過ぎた」


琉生にもたれかかる形で少しばかり歩き始めた。


「何言ってんだよ、学校でもトップクラスの実力のお前が弱いだと?笑わせんなよなー俺はこれまで頑張ってきたってのに」


「...お前が魔力供給を受けてなかったのは、異世界の地の国の住人だからだろう?」


「...」


この世界の住人でない事が分かれば、何かしら面倒ごとが起こるとは予想がついていた。いつも通りはぐらかそうと心がけたが、クレトの目線は真剣そのもので、冗談が言えたものでは無かった。


「元々お前が努力家なのは知ってた。魔法が使えない事に対して非難する気も無かった...茉莉のことを知っていたからこそ、お前が地の国の人間なんだっていう確信が持てた。正直に話してくれ」


琉生は息を詰まらせる。あんなに散々偉そうにしてきた彼が、自分と対等に話しかけてくる。


「...そうだ。俺はこの世界の人間じゃなければ、魔導師でもないし剣士でもない、普通の人間さ」


「そうか....俺も本当のことを話しておかないとな」


覚束ない足取りで、暗闇に包まれた世界を炎で照らしながら一歩ずつ歩く。


「俺もこの世界の人間じゃない」


「?!お前、名家トレンテスの生まれだろ?」


「...俺はたまたま拾われた養子だ。この世界とは別の次元、天の世界から堕とされた子供らしい。さっきあいつが言ってた光の御子っていうのも、元はその世界の人間の総称だ」


この世界における天の国、地の国とは天界と下界、といった区分らしく、魔力が使えるのはこのグロリアという7大陸を持つこの世界だけだと言われている。このグロリアで生まれたものは9割以上の割合で何かの魔法体質を持って生まれている。


「元は俺も魔力が使えたわけではない、ということだ。」


その事実に驚いた。ただあの天才と謳われた人間が、琉生自身と出生は違えど異世界の住人であるということに。身体がこの世界に適応してくると魔力の源が現れてくる事があるらしい。


「なんか親近感湧いたな。俺たち似た者同士なんだって」


「それは違う」


クレトがいつもらしく否定をしてきたところで、お互いに笑みが少し溢れたようだった。


--こいつが本当の相棒と呼べる日が来たなら、あの事についても教えてやっても良いかもしれない。


ふっ、とクレトが口元を緩めるとその姿を見た琉生がまた笑い始めた。その微笑みもつかの間、茂みでばったりと先程の黒服の魔導師達と出くわしたのだ。


「さっきのやつと違う...けどこの人数じゃあ避けては通れそうにないな」


琉生はすかさず剣を構え、足に炎のエネルギーを貯めている。彼は自身の武器が跳躍や加速であると自覚をしていたので、炎を用いる事でブースターの役割を担っていた。


「悪りぃけど、さっき言ってたことは撤回な。こいつら蹴散らしてみんなの所へ行こう」


「俺も元々そのつもりだ」


お互いの背中を預け、ざっと数えて20人程の黒服の魔術師達を一斉に斬り伏せていった。そう簡単に雑兵といえど倒されないようで、ひたすら斬り続けた。


「っ...急所を確実に仕留めたのに生きてやがる...?!なんなんだよこいつら...」


「まさか...」


クレトは不意に思い出したようで汗を拭いながら琉生に彼らの正体を伝えた。


「聞いた事がある、幹部の一部のメンバーを除いて...因縁に囚われた人間が屍として闇属性の魔法で操られているらしい。その証拠として、どこかの身体の部位が白骨化していた」


「それって...生きてない奴をどうやって倒すんだよ」


「...秘策ならある。ただリスクを伴うが...俺とお前の特性を生かした戦法だ。やれるか?」


琉生は息をのむと、彼らの執念とも見えるような立ち姿に恐怖を覚えながらも、この戦いの突破口を見出せるのであれば、どんな方法であっても知りたいと思ったのだ。


「わかった、教えてくれ。シュヴァリエ試験前の初のコンビ任務と思って、やってやるぜ!」

黒衣の魔術師達はかなりの人数がいて、推定万はいるようです。あらゆる大陸に散り散りにいるらしく...生態系は定かではないとのこと。

...1ヶ月におよぶ戦いが幕を開けました。果たして勝利を手にするのは誰なのか...?

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