第四話 勇者とは
今回説明多いので、適当に読んでもらったらいいと思います
結局、召喚された五人の中で、勇者でなかったのはおれだけであった。
判定を受ける際、蟻芝さんと道祖君は緊張の面持ちで、反対に一君は妙に自信あり気だった。主計さんはどちらとも言えない様子だった。
さて、勇者とは具体的にどのような存在なのか。
現在は人間も魔族も、ついでにその他の種族も複数の国家を建てているが、遥かな昔は、どちらも一人の王のもとで一つに纏められていたという。この頃、両者は熾烈な争いを繰り広げており、原初の勇者が現れたのはそんな時代である。
「で、その勇者ってのが俺らみたいな異世界人だったっつー話で、そいつが剣も魔法もとんでもなく強かった。以後、この世界の人類に危機が訪れると、異世界から勇者を召喚するようになった。ということっス」
「なるほど、ありがとう一君」
「左右加さん、蔵書室に行って歴史書みたいなの読んだんでしょう?そこに書いてなかったんですか?」
「いや、主計さんの言うとおり、あった。君達がどんな風に話を聞いているのか、少し気になったのだ」
おれ達が突然、何の断りもなく召喚されてから十日がたった。
おれ達はそれぞれ王城内に一人部屋が与えられ、そこをねぐらにしている。
他の四人は驚くほど落ち着いているように見えるが、実はそうでもない。
夜、なんとなく城内をふらついていると、部屋の前を通るときに嗚咽が聞こえたり、落ち着きなく早足でぐるぐる歩いているところを見かけたりする。気の毒に思うがおれに出来ることなぞないので、そんなときは見つかる前に歩き去ることにしている。
おれは口が上手いわけではないので、根拠のない慰めをしたところで何の意味もなさないと思う。無用の希望を持たせては申し訳ない。
「勇者ってマジすげーっスよ!剣なんか持ったことねーのに、訓練受ける度に驚くほど馴染んでいくんスよ」
ただ、この一君だけはそんなところを見たことがない。おれが彼のそういうところを知らないだけかもしれないが、一君は一番現在の状況を楽しんでいるように思う。
一君は深夜のコンビニ前で仲間と座り込んでいそうな見た目で、その印象通りの生活をしていたなら、案外家族などに未練はないのかもしれない。
いや、もしそうだとしても、つるんでいる仲間はどうなるのか。もしや孤高の喧嘩番長か。
まあ、いい。
「確か君達は魔法も使えるのだったか」
「そうなんスよー、俺は業熱魔法つって、熱を放ったり操ったり出来るんスよ」
「熱を操るというのは便利そうだな」
「あー、けど俺の体温以上って決まりがあるんスけどね」
「冷やせないのか」
「残念ながら」
彼らが勇者だと確定した翌々日から、早速修練が始まった。おれは受けていないからよくわからないが、大雑把に分けると、身体作りや戦闘時の動き方等身体的な修練と、魔法の訓練である。
普通は基礎的な身体が出来てから戦闘訓練をするもので、最初から両方を平行してするものではないのではないか、と素人ながらに思った。しかし勇者に限ってはそうでもないらしい。
先程一君も言っていたが、勇者というものは経験が身につくのが異常に早い。訓練中ならば、数日で一兵卒に匹敵するようになったという。
これについては、勇者という存在の格がどうとか読んだような気がするが、よくわからなかったので忘れてしまった。
「私のは幻影魔法です!」
「幻を見せるのか。しかし随分と嬉しそうだな」
「少し子供っぽいですけど、魔法を使うのに憧れがあって…」
「そうか」
宝籤で一等が当選した幻を見せて、散々夢心地に浸らせた後に現実に引き戻すという使い方はどうだろうか。
勇者だとか魔族だとかの話が出てきたときから見当はついていたが、この世界には魔法が現実に存在する。ただ、何でも出来るわけでもなく、今二人が言ったように魔法は『こういうことが出来る』魔法として、あらかじめ形が決まっていた。
そしてこれも勇者故、彼らの魔法を使うために内蔵される力、魔力はそれはそれは莫大なものらしい。ちなみに魔法を使う者の体内にある魔力を“オド”、外界に浮遊している魔力を“マナ”と区別して呼称する。
「あとの二人は、どうだ」
「蟻芝も道祖も同じっス。どんな魔法使うんだっけな……」
「何か最近、見ることが少なくなってきたような気がします」
今ここにいない蟻芝さんと道祖君も同様に、短期間で恐ろしく上昇した戦闘技能ととんでもない体内魔力を備えている。
一方おれは剣を振ることも魔法を使うことも出来ないでいる。戦闘技能には興味はないが、魔法が使えないのは少し残念な気がしないでもない。
一、二話読み返したら、早くあらすじ部分に行きたいと思ってるせいか、主人公たち物分かり良すぎな気が