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第二話 自己紹介

「で、これ本当に現実か?俺達みんな夢見てんじゃねーの」


 あてがわれた部屋に着いて案内人がいなくなると、大学生くらいの青年が乱暴にベッドに腰かけ、そう言った。


「…じゃあ、あたしたち全員同じ夢見てるって?」

「集団幻覚ってなあるだろ、そんな感じじゃね」


 胡乱げに青年に返したのは、高校生くらいの少女。もしかしたら大学生かもしれない。とうに学生でなくなった身からすれば、制服でなければ見た目の区別が着きにくい。


 それはともかく、これが現実と思えないのはおれも同じだ。夢と言われた方がよほど納得できる。


「ま、とにかくあれだ、自己紹介でもしようや。夢でも現実でも、お互いの名前くらい知っててもいいだろ」


そんな彼の言葉に全員同意して、自己紹介の流れになった。


「じゃまず俺から。俺は一和哉(にのまえかずや)。大学生でーす」


 最初は言い出した彼から。茶に染めた髪を後ろに上げて、カチューシャでまとめている。両耳にはピアスを着けていて、非常に軽薄な印象がする。


「あたしは蟻芝綾香(ありしばあやか)、高二、です」


 明るい髪色で、ポニーテールの背の高い少女。やはり高校生だった。


「えっと、僕は道祖土啓(さいどけい)です。高一です」


 眼鏡をかけていて、(にのまえ)君とは対称的に真面目そうな少年である。


主計佳奈(かぞえかな)、大学二回生です」


 軽くウェーブしたというのか、そんな風になっている、なんとなくほわほわした感じのする少女である。

 大学生は少女か女性か、どう形容すべきか曖昧に感じる。そんなことはどうでもいい。


左右加静紀(そうかしずき)、社会人だ」


 小さい時分は「そうか」と言うと、「そうかがそうかって言ったー!」などといじられた。


「で、話戻すけど実際どうよ?いきなり勇者だとか魔族だとか言われたけどさあ、俺らに戦えるのか、てな」

「…えっと…」

「何だ道祖(さいど)、言いたいことあんの?」

「……」


 道祖君は一君に対して少し苦手意識を持ったようで、もごもごやっていたが、結局発言した。


「勇者として召喚されたなら、既に僕達にはなにかしらの力とかがあるんじゃ…」

「なるほどね、あたし達に自覚がないだけで、生まれつきあたし達には何かあるのか、召喚自体に力を与える効果があるのか、そんなところなのかしらね」

「魔法とか使えたりするのかなー」


 おれは先程から面倒くさいから帰りたいとしか考えていないのに、年下の彼らは皆妙に冷静だった。これも勇者所以かもしれない。

 では…おれは勇者ではないのか?だったらいいのに。


左右加(そうか)さんはどう思うっスか?」

「怪しいから帰りたい」


 しまった。急に話を振られたものだから、素直に答えてしまった。


「まあ…やっぱそっスよねー」


 ところが、一君の反応はこんな風であった。それに反論したのが蟻芝さんである。


「ちょっと、あの王様の顔見てなかったんですか?あんなに一生懸命で…あれで嘘ついてるなんて思えない」

「どーだかなあ、表情なんかどうとでもなるだろ。勝手なイメージだが、王様ともなりゃ腹芸の一つくらいはできなきゃ務まりそうにねーしな」


 それにまた蟻芝さんが噛みつく。それにまた一君が否定的な意見を言う。以下、これの繰り返しとなった。

 どうやら蟻芝さんは正義感が強過ぎるきらいがあり、一君は慎重な性格のようである。

 

「君達はどうだね」


 言い合う二人をよそに、道祖君と主計(かぞえ)さんに聞いてみる。


「僕は、…まだわからないです。けど、困っている人がいて、それを僕が解決できるなら、そうしたいです。」

「私もそんな感じですねぇ。まあでも、勝手に呼ばれて戦えー、だなんて言われても…」

「そうか」


 そもそも唐突過ぎて理解が追いついていない。だからまだ判断できない。こんなところか。

 明日また王様たちと話すことになっているから、それからまた考えれば良いだろう。


 蟻芝さんと一君はまだ口論している。一君は特に変わった様子はないが、蟻芝さんの表情は少しばかり険しくなっている。


 ふと窓の外を見ると既に闇の帳が降りていた。とりあえず寝ようと思ったので、二人を止めることにした。

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