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スティグマ・シロップ
荊の冠 小指の爪 ささやかな白い花
香油が滴って 太腿を這う
ほのかな腐臭 青ざめた肌
赦された光が頬を照らす
音が消えた一日
跪いて心を巡らす
アラバスターの微笑
聞こえない歌を捧げる
誰もいない祭壇
自己を逃れえない哲学
散らされた羽根
受肉した理想があだめく
棺にもみの枝を
唇に黄金の蜜を
さ迷いだす旋律をなだめて
ただ慈悲を乞う
追憶のカノン
独りきりで
とまどわないで
可憐な花
ベールをめくる
乾いた風
欠落の白をまとって
血が
垂れていった