78/130
ガラス越しの桜
もう帰れなくても
桜は咲いているんだね
あれから何年たっただろう
見覚えが少しずつ
なくなっていくのに
淡雪のように
花は咲く
薄墨を流したような空
肌寒いのだろう
人気のない街
花だけが群れて
紅を差す
風の冷たさも暖かさも
忘れてしまった私には
機械の眼だけが
季節を告げる
白い部屋
沈黙をピアノが埋めて
麗しきノクターン(!)
そんなことより
森のせせらぎが聴きたい
小川は遠く
ふるさとはもう歌えない
耳鳴り二重奏
後
どれだけ聞こえますか
まなうらに浮かぶ
桜並木
きらめく水面
伝聞にも
飽きてしまった
ああ
一枝の春に
触れたい
今




